米国成功報酬債に対して初の評価報告が公表されました

米国会計検査院が、現在、米国で進められている成功報酬債(Pay for Success Bond)に関する初の評価報告を公表しました。日本でも導入が進められようとしている社会的インパクト債。今後を考える上で参考になると思いますので共有しておきます。

評価は、米国会計検査院内にタスクフォースを設置して行われました。対象は、現在、米国連邦政府が進めている10の成功報酬債プロジェクト。評価の観点は、(1)それぞれのプロジェクトはどのように構成されており、どのような利益を生み出す可能性を持っているのか、(2)それぞれのプロジェクトの契約は、潜在的なプロジェクト・リスクに対応するようどのように構成されているのか、(3)成功報酬債プロジェクトに関わる連邦政府の役割としてどのようなものがあるのか、の3点です。

説明するまでもありませんが、成功報酬債というのは、一定の達成目標を設定し、この目標達成のために中間組織が民間資金を債券の形で調達します。一定期間後に、この目標が達成されれば、連邦政府は中間組織を通じて民間投資家に投資リターンを還元し、目標が達成されなければ、投資リターンはありません。この意味で、成功報酬債というのは、予防介入措置の試験的実施リスクを民間投資家に移転する事業と考えることも出来ます。

報告は非常に詳細にわたるので、簡単にまとめることは難しいのですが、重要なポイントとしては以下を挙げることが出来ると思います。

1)目標達成のために、事業の対象を真にサービスを必要としている層から、目標達成の容易な層に変更しがちであるというリスクがある。この解決のためには、事業の設計時点で、より綿密な事前評価と計画の精査が必要であり、これを契約に落とし込む必要がある。

2)成功報酬債に要する連邦政府のコストは、実は非常に高い(投資リターン、事業運営、モニタリング等)。期待できる成果と連邦政府のコストを慎重にバランスさせる必要がある。

3)様々なリスクがあり、また成功報酬債はまだ初期段階でより多くのエビデンスを集めていく必要があるが、少なくとも予防的措置の分野に関しては、リスクを政府から民間に移転するという点でメリットはあるだろう。ただし、成果が現れた時点で、成功報酬債から政府の直接事業に切り替えることが望ましい。

4)現時点では、さまざまな連邦政府機関がばらばらに成功報酬債のプロジェクトに取り組んでいるが、情報共有とリスク管理の観点から、何らかの形で連邦政府内にワーキンググループを設置して情報共有を行う必要があるだろう。

それぞれ、なかなか鋭い指摘が含まれていると思います。今後、日本でも、参考にすべき点が多いと思います。原文に当たりたい方は、以下のサイトをご参照ください。

http://www.gao.gov/assets/680/672363.pdf

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