循環型経済に向けて:エレン・マッカーサー財団の野心的試み

別件で調べ物をしていたら、英国のエレン・マッカーサー財団に出くわしました。面白かったのでご紹介しておきます。

エレン・マッカーサーという人は、単独航海で有名な人で、2005年に世界一周の単独航海を成し遂げました。その後、世界中を回って様々な人たちと対話を重ね、2010年に財団を設立しました。財団の目的はただ一つ、「循環型経済」の推進です。

日本人にとっては、「循環型経済」なんて何を今さら、という感じかもしれません。実際、日本だけでなく、世界中で、省エネ、資源の再生・再利用が進んでいますし、ゼロ・エミッション工場なども登場しています。確かに、単独の財団が、今さら「循環型経済」を掲げて何をするの?という印象を持つのが正直なところです。

しかし、実際の財団のプロジェクトをチェックし、この5年間の成果を見ていると、これは結構面白いかもしれないと思い直しました。財団が行っていることは、循環型経済にクロス・セクターで取り組むプロジェクトを組織・支援したり、循環型経済について研究する大学・教育機関のグローバル・ネットワークを作ったり、オンライン上で循環型経済に関するテクノロジーや社会デザインのショウケースを行ったりというものです。また、循環型経済に向けての政策ツールキットを開発し、さらに循環型経済の発展を測定するインデックスの開発にも取り組んでいます。

私が面白いと思ったのは、この財団の活動を通じて、現在、世界各地でソーシャル・イノベーションの名の下に進められていることの多くが循環型経済に資するものであり、かつばらばらにイノベーションを進めるよりも統一した指標に基づいて政策パッケージとして推進する方がより効果が大きいと言うことが見えてくる点です。特に、循環型経済による経済成長と雇用創出効果についての統計は説得力があります。

OECDでも循環型経済に向けたロードマップなどが提案されていますが、このターゲットは基本的に、エネルギー効率の向上、資源の再生・再利用を通じた廃棄物の最小化、消費行動の変容などです。しかし、財団は、たとえばカー・シェアから合鴨農法まで、考えられるイノベーションのすべてを網羅しようとしています。

ある意味で、ドンキホーテ的とも言える財団の取り組み。たとえばこれから5年後にどのような成果を出しているのか、楽しみです。やはり民間財団はこれぐらい大風呂敷を広げてほしいですね。

http://www.ellenmacarthurfoundation.org

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