データ志向アプローチのためのインフラ整備

欧米のソーシャル・セクターでは、近年、データ志向、エビデンス志向が声高に議論されています。確かに、「やること自体に意義がある」から「結果を出すことに意義がある=成果志向」へと大きくソーシャル・セクターが転換している中で、データやエビデンスを強調することは大切なことです。しかし、これをかけ声だけに終わらせたり、あるいは資金提供者(政府、財団)が、ただ一方的にソーシャル・セクターに丸投げして後は知らない、ということでは事態は改善されません。

ネットワーク・インパクトが最近発表した「健康的、公正、持続可能なコミュニティのためにデータとテクノロジーをレバレッジする」という調査報告書は、この問題について、興味深い提案を行っています。

調査セクターは、ビジネスや政府機関がエビデンス指向を強める中、ソーシャル・セクターもこの動きを加速させる必要があるとした上で、優先的に取り組む事項として以下の3つを取り上げています。

1)データのエコ・システムへの投資
→データへのアクセス、データの標準化、データ収集などのインフラ整備。データ分析と知識・情報の共有の枠組みづくり。

2)公平性と社会正義の推進
→データの利用が格差や不公平の増進につながらないよう、人々のデータ・リテラシーを高め、プライバシーの保護を確保し、すべての利害関係者にデータが共有できるようにする。

3)データに基礎を置く文化の醸成
→データが組織内外に持つ意味を認識し、データに基礎を置く文化を育む。

それぞれ、重要な指摘だと思います。資金提供者が、ただデータの重要性を説くだけでなく、実際にソーシャル・セクターがこの問題に取り組むようにエコ・システムの構築に投資すべきだという点は、いくら強調しても強調しすぎることはありません。また、公平性と社会正義の推進を謳っている点も興味深いと思います。社会問題(貧困、疾病、災害、失業、教育・・・)問題を解決するためのデータ収集の結果、個人のプライバシーが侵害されたり、分析結果がコミュニティにフィードバックされなかったりすることで、結果的に社会的弱者がさらに困難な状況に陥るような事態は絶対に避けなければなりません。

報告には、これ以外にも、インフラ整備にあたってデータやテクノロジーの専門性を高めるための人材育成の問題なども取り上げており、参考になります。今後、日本においてもデータ、エビデンスの議論を避けて通ることは出来ません。この問題を考える良い契機になると思います。

http://www.networkimpact.org/leveragingtech/#findings

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