包摂的起業(Inclusive Entrepreneurship)の促進

主要先進諸国はポスト福祉国家に向けて様々な試行錯誤を進めています。低成長の時代には、若者に十分な雇用機会を与えることが出来ない一方で、高齢者や障害者に対する福祉サービス提供の財源は限られています。シングルマザーの貧困の問題も深刻です。こうした問題には、従来型の福祉国家モデルではなく、新たなモデルの構築が必要です。

OECDの報告書「失われた起業2015」は、この問題に対して、若者、老人、女性、障害者、移民や少数民族に対する「包摂的起業(Inclusive Entreprenership)」を促進することで取り組むことを呼びかけています。「包摂的起業」というのは、社会的包摂を目指す社会的企業の立ち上げと成長を目指す取り組みです。これにより、雇用を生み出し、新たな事業モデルを構築することで、失業や貧困の解消を図ろうという考え方です。

では、具体的に「包摂的起業」を進めるために必要な施策は何か。報告書は、OECD主要国の様々な事例を紹介・分析して提言をまとめています。ポイントは「ビジネスのスタートアップと成長段階に対する公的支援(トレーニング、資金提供等)」と、「ネットワーク形成を通じたピア・コーチング&メンタリング」です。

ビジネス立ち上げや拡大に必要な経営ノウハウを教え、彼らに公的資金に裏打ちされたマイクロファイナンスを提供し、さらにピアネットワークの場を通じた自発的なコーチングやメンタリングを促進することが、高い効果を上げていることは、各国の様々な事例分析が証明しています。

もちろん、こうした政策パッケージを作っていくためには、マイクロファイナンス機関の育成や、社会的企業の包括的調査・事例研究、インキュベーションやスタートアップ支援プログラムなどのエコシステムの確立も必要になるでしょう。報告書は、各国の具体的事例を集めていて興味深いです。日本でも社会的企業の育成や社会包摂の推進は重要な課題です。この報告書は、参考になると思います。

http://www.oecd.org/…/the-missing-entrepreneurs-2015-978926…

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