システム志向のグラント・メイキング

現代の戦略的グラント・メイキングにおけるキーワードは、言うまでもなく「インパクト」です。1990年代以降、グローバル・フィランソロピー・セクターは、限られた資源をいかに活用して最大限の「インパクト」を達成するかを追求して、様々な支援手法を開発してきました。社会的インパクト投資や集合的インパクトなども、この過程から生み出されてきたものです。

こうした様々な手法が開発されてきた中で、近年、「万能の処方箋は存在しない」「単一のソリューションで今日の相互依存を深めた複雑な世界の諸課題を解決することは出来ない」という合意が形成されています。では、どうすればよいのか、という議論から生まれてきたのが「システム思考」です。これは、グラント・メイキングの世界だけではなく、社会のあらゆる領域に広がっている手法ですが、グラント・メイキングにも、この考え方を積極的に取り入れ、これに基づく支援手法を開発しようという動きが出てきました。

システム思考とは何でしょうか。たとえば、プログラム・オフィサーとして、グラント・メイキングに関わった人であれば誰でも経験することですが、何か支援を行う場合には、様々な波及効果が発生します。その波及効果の要因の一つには、グラント・メイカー自体の存在も含まれます。分かりやすい例で言えば、ゲイツ財団が大規模な支援を三大疾病に行った結果、大量の研究者がこの分野に集中し、他の熱帯病対策がおろそかになるというケースです。従来であれば、「それは不幸な外部効果だ」と無視すれば足りましたが、こうした複雑性や外部波及効果を常にモニターしながら、システム的に最良の選択肢を探す必要があると考えるのが「システム思考」です。

GEO (Grantmakers for Effective Organizations)が立ち上げた「システム志向グラント・メイキング・リソースガイド」というウェブサイトは、これに関する有益な情報リソースを分かりやすく整理してくれていて役に立ちます。「システム志向のグラント・メイキング」とは何か、これを行うために必要な心構えは?、どのような場合にこれを導入すべきか?、導入の方法は?、など様々な疑問に対して分かりやすく説明している上、導入のための自己評価ツールや、システム志向のグラント・メイキングに関するリソース・リストも用意しており有益です。

私も、このサイトで初めて知ったのですが、既にシステム思考を取り入れたグラント・メイキング用のマッピング、評価、戦略などのツールが多数開発されているようです。これは、戦略的グラント・メイキングの新たな潮流になるかもしれません。ご関心のある方は、ぜひ以下のサイトをご覧下さい。

http://systems.geofunders.org

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