アプリを通じた日雇い派遣労働者支援プログラム

先進国共通の問題の一つが若年層のワーキング・プア問題。特に、日雇い派遣労働者は、正当な賃金が支払われなかったり、募集と異なる労働に従事させられたりとトラブルが絶えません。アメリカのシンクタンク「ニュー・アメリカ」の記事は、このような日雇い派遣労働者を支援する強力なツールとして、スマホ・アプリの可能性を論じています。

言うまでもなく、スマホは日雇い派遣労働者の貴重なツールです。彼らは、スマホを唯一のインターネット・アクセス手段として活用し、職探しから知り合いとの情報交換、さらに銀行口座の管理までを行っています。米国の場合、貧困層の6人に1人がスマホに依存しています。スマホは決して経済的に余裕がある者だけのツールではないのです。

支援組織も、スマホ・アプリの可能性に着目しています。たとえば、ニューヨークに拠点を置くNICEが開発した「Jornalero(スペイン語で日雇い労働者という意味だそうです)」は、日雇い労働者が自分の位置情報、勤務時間、雇い人の情報、勤務場所などを記録できるアプリです。

NICEは、仮に、未払い賃金や不当に低い賃金などの問題が発生した場合、日雇い労働者がまずこのデータに基づいて請求を行い、もしも認められなければ、NICEが法的措置を起こすというプログラムを立ち上げました。この結果、従来、適切なデータが残っていないために泣き寝入りしてきた労働者が正当な賃金を要求できるようになりました。さらに、日雇い労働者は,このアプリを使って問題のある雇い主の情報を公表し、他の日雇い労働者に警告することも出来ます。

また、シカゴでは、HourVoiceという団体が同じように労働者が勤務時間や位置情報などを入力できるアプリを配布しています。こちらの方は、スターバックスやマクドナルドなどで働く低賃金労働者が対象。給与単価を入れることで給与計算が出来るようにし、さらに最低賃金の情報なども提供しています。これにより、最低賃金以下で働かされたり、給料の不当カットが行われた場合には、すぐにチェックして支援労働組合などが交渉できるようになりました。

もちろん、既にこの情報ボックスでご紹介してきたように、金融包摂の分野でも、現在、低所得者向けの様々なローン・プログラムや金融コーチング・アプリが開発されています。まさに、スマホのアプリは、今までなかなか支援が難しかったワーキング・プア層を支援するツールへと発展しつつあるのです。

但し、テクノロジーには両面がある点も忘れてはなりません。記事は、このようなアプリを通じた支援の危険性も取り上げています。それは、コストの問題、プライバシー保護の問題、そして自己責任論の危険性です。こうした危険性に常に配慮した形でのイノベーションと支援が求められます。

いずれにせよ、スマホ・アプリを通じた社会包摂への取り組み、今後も様々なイノベーションが登場しそうです。

https://www.newamerica.org/…/we-need-to-protect-low-income…/

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