「非営利型持ち株会社」というコンセプト

スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビューに「非営利型持ち株会社」についての論考が掲載されました。いろいろな議論はありそうですが、結構面白いアイディアだと思うので紹介しておきます。

非営利組織にとって、立ち上げから成長・スケールアップという道のりは簡単ではありません。とても良いアイディアを持った少人数の仲間で組織を立ち上げても、これが成長軌道に乗るには資金面や運営面で様々な障害が立ちはだかります。特に、エクイティを通じて資金調達が制約されている非営利組織にとって、スケールアップのための資金を調達することには困難が伴います。

通常、営利のベンチャー企業の場合、ベンチャー・キャピタルを通じた資金・経営支援と並んで利用される手法が、大企業によるM&Aです。立ち上げチームは出来るだけ維持しつつ、大企業の経営資源(資金・経営からマーケティングまで)を利用できるようになるため、成長・スケールアップに伴うリスクを最小化することが出来るというメリットがあります。

しかし、非営利組織の場合、組織のアイデンティティやミッションの問題があるため、このようなM&Aにはなかなか抵抗感があります。また、そもそも、エクイティ投資が出来ない非営利組織では、資本参加を通じたM&Aという手法は現実的ではありません。

そこで、この記事が提案するのが、疑似M&Aとでも呼ぶべき、大手非営利組織とのパートナーシップ締結です。これは、小規模のスタートアップ非営利組織が、全国規模やグローバルな規模の大手非営利組織とパートナーシップ契約を締結し、大手の経営資源を活用しながら、成長・スケールアップを目指すという考え方です。言い換えれば、非営利のままで、持ち株会社に似た経営組織を作り、規模を通じた経営の安定化と高度化を目指そうというアイディアだとも言えるでしょう。

もちろん、このアイディア、言うは易く行うは難しです。記事では、非営利型持ち株会社組織への移行の方法として、まずはプログラムレベルでのパートナーシップからはじめ、徐々にリーダーシップや意思決定の調整を行いつつ、最終的に持ち株会社化に進むことを提案しています。今後、様々な事例や試行を通じて、この手法も洗練されていくでしょう。

非営利組織のスケールアップ手法については、特定組織のキャパシティ・ビルディング、ソーシャル・フランチャイジング、ソーシャル・レプリケーションなどのモデルが提唱されてきました。また、集合的インパクト・モデルのようにネットワークを通じたスケールアップの考え方もあります。今回の非営利持ち株会社のアイディアは、新たなモデルの可能性を開いてくれそうです。

http://ssir.org/…/no_exit_the_case_for_nonprofit_holding_co…

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