参加型グラント・メイキングとコミュニティ・インパクト投資

アメリカのコミュニティ開発においては、コミュニティ財団が大きな役割を果たしていますが、その一つ、シカゴ・コミュニティ・トラストが、ユニークな事業モデルを打ち出して話題を呼んでいます。

1つは、「ベネフィット・シカゴ」という1億ドル(約110億円!)相当のインパクト投資イニシアチブ。マッカーサー財団、カルバート財団とパートナーシップを組み、シカゴのコミュニティ開発に従事する非営利組織や社会的企業に投融資をしようという野心的なプロジェクトです。

このプロジェクトのユニークな点は、資金調達手法。米国では、ドナー・アドバイズド・ファンドという自由度の高い寄付口座の開設が認められているのですが、今回の資金調達は、このドナー・アドバイズド・ファンドの寄付金運用先に、カルバート財団のコミュニティ投資証券を指定することが出来るようにすることで調達します。既存のドナー・アドバイズド・ファンドの資金を活用するため、新たな資金調達キャンペーンの手間を最小限に抑えることが出来ます。

もう一つのプロジェクトは、これが3年目になるOn The Tableというイニシアチブ。シカゴの課題解決に住民の声を反映させるため、市内の家庭や学校、公共機関やコミュニティ団体などで少人数の食事会を開き、そこでコミュニティの問題を議論するイベントを一斉に開催します。今年は5月10日に開催予定。同じ日に一斉に開催することで、インパクトを目指します。ちなみに、昨年は約2000組の食事会が開催され、参加者数は25000人に上ったとのこと。

このイベント、もちろん、食事をしながら話をするだけではありません。議論の内容や様子は、ハッシュタグ#OnTheTableを通じてリアルタイムで共有していきます。また、事務局が全ホストにフォローアップ調査を行ってインパクト報告をまとめます。この報告書を見れば、シカゴの住民が、コミュニティの問題として何を取り上げ、どのようなソリューションを求めているのかが一覧できる仕掛けになっています。

さらに、OnTheTableの議論から出てきた革新的なアイディアに対しては、最大1000ドルのグラントも提供されます。ただアイディアを持ちよるだけでなく、これを形にするための住民の活動を支援するという点でも、ユニークなプロジェクトになっています。

シカゴ・コミュニティ・トラストの2つのイニシアチブは、コミュニティをベースに、ソーシャル・メディアを最大限に活用しながら、自分たちで問題解決に取り組もうという、ネットワーク型課題解決と市民参加型資金調達の新たなモデルを提示しています。このモデル、日本の地域創生にも活かせそうですね。

http://www.cct.org

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