集合的インパクト成功の秘訣:同性婚権利獲得運動の事例から

日本でも集合的インパクトに関心が集まっています。セクターを超えた多様な組織が、目標と評価基準を共有してインパクト達成を目指すこの手法、FSGが定式化して国際フォーラムも立ち上がっていますが、その形態は多様です。アドボカシー活動も加えると、その範囲はさらに広がります。

おそらく、近年の集合的インパクトの最大の成功例は、米国の同性婚権利獲得運動ではないでしょうか。2000年代初頭のブッシュ政権の憲法改悪の動き(同性婚禁止を憲法上規定しようとした)に対抗して始められたこの運動は、10数年の歳月をかけて最終的に最高裁で同性婚の合憲判断を獲得するに至りました。

この運動を主導した財団コンソーシアム「Civil Marriage Collaborative (CMC)」のメンバーがワシントン・マンスリーに寄稿した記事は、この集合的インパクトの成功の秘訣を詳細に説明していて興味深いです。ぜひ本文を読んでほしいのですが、とりあえずポイントだけ説明しておくと。。。

1)CMCに複数の助成財団が参加し共同ファンディングを行った
⇒この結果、長期にわたり、大規模な資金提供が保証された

2)CMCにより、草の根レベルのLGBTアドボカシー団体の全国ネットワークが形成された。
⇒この結果、全国レベルでの多様なキャンペーンが可能になった。

3)詳細なデータ分析により、アドボカシー戦略を修正できた
⇒LGBTグループと一般との認識ギャップがどこにあるかを大規模なインタビュー調査で分析しアドボカシー戦略を修正することで、一般の支持を獲得できるようになった。

4)多様な手法を組み合わせることで運動の裾野を拡大した
⇒単に議員に対してロビーイング活動を行うだけでなく、ネットワーク形成、法廷闘争、一般向け教育、世論へのコミュニケーション戦略等を実施。特に財団資金が、戸別訪問、メディア戦略、宗教団体へのアウトリーチに投じられた点は大きい。

社会を変えるためには、長期にわたる運動の持続が必要です。短期集中でマスコミと議員に働きかけるだけで得られる成果は分かりやすいかもしれませんが、その場限りのものになりかねません。

集合的インパクトとは、本来、このような社会の価値観の変容を通じて、持続的な変革をもたらすべきものです。その意味で、この同性婚の権利獲得運動は、今後、集合的インパクトのベスト・プラクティスとして参照され続けるでしょう。

ところで、この記事を読んでいて最も印象深かったのは、データ分析の部分です。当初、彼らは、「同性婚は、権利と責任の問題だ」と主張していました。しかし、詳細なインタビュー調査の結果、一般の人々は、「結婚とは愛に基づくものであり、同性婚者の主張は我々の価値観と異なる」と感じていることが判明しました。これを踏まえ、彼らは、「同性婚を通じて私たちにも愛を形にさせてほしい」という主張に修正しました。結果的にこれが、人々の心をつかんだと言うことです。データの重要性、一般へのコミュニケーション戦略の重要性がよく分かるエピソードだと思います。

とても参考になる記事なので、ご関心のある方、ぜひ原文を読んでみてください。

http://philanthropy.washingtonmonthly.com/…/winning-marria…/

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