社会的企業

社会的企業とは、広く社会的目的と経済的目的の双方を実現するための活動を行う団体を指します。社会的企業には、非営利団体、協働組合、会社などの様々な法的形態が含まれます。

1.法形態

近年、社会的目的の実現を基本とする非営利団や協同組合などの第3セクターに対し、社会的目的と経済的目的の双方の実現を目指す団体を「第4セクター」と名付け、こうした団体に新たな法人格を与えようという動きが広がりつつあります。米国の「L3C(Low Profit & Low Liability Corporations)」「B-Corp(Benefit Corporations)」、英国の「コミュニティ利益会社」、イタリアや韓国の「社会的企業」などの新たな法人格が導入されています。一般に、社会的企業の法形態は、以下の3つのモデルがあります。

  • 協同組合モデル
    ポーランドやイタリアの社会的協同組合のように、社会的目的を持った特定の協同組合事業体として法的に規制される場合
  • 会社モデル
    ベルギーの社会的最終目的会社や英国のコミュニティ利益会社のように、活動の社会的成果と利益分配に対する制約を持った営利企業体として法的に規制される場合
  • 自由選択形態モデル
    フィンランドの労働統合的社会企業やイタリアの社会的企業のように、法人格に関わりなく、社会的な成果との関連で法的に定義される場合

2.社会的企業のエコ・システム

社会的企業が発展するためには、これを促進するためのエコ・システムの整備が必要です。主な取り組みには以下のものがあります。

  • 社会的企業のための法整備
    一定の要件を満たすものに社会的企業としての法人格を付与し、税制や補助金などで優遇措置を講じるのが一般的です。また、社会的企業に資金を提供するための法整備も必要です。例えば、社会的企業の重要な資金源となることが期待されるクラウド・ファンディングを発展させるためには証券取引法などの関連法を改正する必要があります。
  • 社会的企業に対する資金の提供
    社会的企業を促進するためには、欧州委員会や米国SBICの社会的企業支援プログラムなどのように、政府が積極的に社会的企業に資金を提供する必要があります。また、社会的企業への支援を行っているベンチャー・フィランソロピーの育成や社会的企業に資金を提供する「社会的証券取引所」などの新たな仕組み作りを行っていく必要があります。

©Tatsuaki Kobayashi(2015)
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