米国に広がるパブリック・バンキング運動

米国のパブリック・バンキング研究所をご紹介しておきます。この研究所、2008年のリーマンショック後に設立されました。設立の契機は、リーマンショック後、多くの金融機関が税金を投入して救済されたのに、この金融機関で資金を運用していた州政府や自治体は大きな損失を被ったのに何の救済も得られなかったという反省にあります。

同研究所は、ノースダコタ州に唯一残っていたパブリック・バンクに着目し、州政府が運営するパブリック・バンクがあれば、このような金融危機を回避できるのではないかとして普及運動に乗り出しました。

パブリック・バンクとは、州政府や地方自治体が運営する銀行です。民間金融機関と異なり、公共の利益に資することを目的に掲げ、株式の保有は公的機関に限定されます。銀行として、地域限定でコミュニティ開発、インフラ整備、低所得者層を中心とした低利の融資を行い、収益は株主への配当ではなく、公的基金に還元されます。原資は、域内の税金や年金などです。

利潤率は低いですが、州や自治体内部で、税金・年金などの資金を活用した融資や投資がなされ、収益はそのまま銀行に戻されるため、地域内の資金循環を活性化します。また、民間金融機関と異なり、法外な手数料を徴収されることもありませんし、リスクの高い運用にさらされることもありません。このため、結果的に地域の経済再生と税収増に結びつくというメリットがあるとされます。

このモデル、スイス、ドイツ、インド、中国、ブラジルでは制度化されているとのこと。グローバル化が進んで金融システムの脆弱性が高まる中、コミュニティが自己防衛手段として取り込む可能性があるかもしれません。ある意味では、コミュニティ開発金融機関の発展型でもあります。今後の展開が楽しみです。

PBI researches, educates, and promotes the creation of public banks at all levels of society.
PUBLICBANKINGINSTITUTE.ORG
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