サンベルナルディーノ銃撃事件とイスラム・フィランソロピー

先週、米国カリフォルニア州サンベルナルディーノで起きた銃撃事件は、イスラム国の影響を受けた米国人イスラム教徒のテロ事件として衝撃を与えました。日本でも、米国内で反イスラム感情が高まっていると報道され、また次期大統領選に共和党から出馬しているトランプ氏が、例によって過激に「イスラム教徒の入国を制限すべきだ」という発言をして物議を醸しています。しかし、多様性を重んじる米国では、こういう報道の陰で、様々な努力が進められていることを見逃してはならないと思います。

ロサンゼルス・タイムズの報道によると米国人イスラム教徒の医師が立ち上げたクラウド・ファンディング・キャンペーン「サンベルナルディーノに対するイスラム教徒連帯支援」は、事件発生後に1,000人以上の寄附者から10万ドル以上を集めたとのことです。寄附金は、犠牲者の家族の葬儀代その他の経費のために使われるとのこと。寄付を通じて、犠牲者に対する支援を行うのみならず、米国人イスラムとしての明確なメッセージを発しようという意味のある試みです。

そもそも、とかく「原理主義」「テロリスト」と並べて報じられるイスラム教ですが、実はフィランソロピーの世界では、イスラムは非常にユニークな位置を占めています。

たとえば、全世界のイスラム教フィランソロピストによるネットワーク「イスラム教フィランソロピスト世界会議」は、毎年、国際的な会議を開催して交流を深め、イスラムのみならず世界中の様々なプロジェクトに支援しています。この規模のフィランソロピーネットワークは他にありません。

また、米国内でも、LaunchGoodのようなクラウド・ファンディング・プラットフォームが、レイシストにより焼き討ちされた黒人教会の再建への支援など、イスラムに関連した事業に対する支援を行っています。

さらに、利子の徴収を禁じているイスラム教の下で、経済開発を推進するために発展したイスラム金融は、その社会性から新たな包摂的金融モデルとして注目されています。

イスラム教を巡る日本国内の言説にも、こういったイスラム教の肯定的な側面がもう少し取り上げられてほしいと思います。

http://www.latimes.com/…/la-me-ln-muslim-fundraise-20151208…

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