米国NPOセクターの課題:インディペンデント・セクター報告

米国を代表するNPOの全国ネットワーク、インディペンデント・セクターが、米国NPOセクターの現状と課題に関する報告書を発表しました。

「コメントと提言:非営利コミュニティによる洞察」と題されたこの報告書が画期的な点は、インディペンデント・セクターのチームが、6ヶ月間かけて全米15都市を巡回し、各地で非営利団体、財団、企業との意見交換会を開催した成果をまとめた点です。意見交換会への参加者は2,000名、そのうち71%は非営利団体だったとのこと。これを通じて寄せられた3,000件のコメントをまとめたのが今回の報告です。現場の声を丹念に拾い集めたという意味で、従来のようにコンサルタント会社がまとめた理念先行の報告書とはひと味違う内容に仕上がっています。

報告書は、現在の非営利セクターに影響を与えている潮流として、(1)格差と環境破壊、(2)人種の多様化、(3)技術革新、(4)個人の参加拡大、(5)企業の社会・環境分野の関与、(6)社会福祉と社会変革の新たなモデル、(7)一般意見の政策への反映という課題、(8)政策形成における国レベルと地方レベルのバランス、(9)財政の制約の中での優先付けという課題、の9つを指摘します。

こうした大きな潮流の中、非営利セクターは、(1)ビジョンと戦略、(2)資金調達、(3)事業運営、能力構築、ガバナンス、(4)相互協力、(5)セクターの人材確保、(6)多様性と包摂、(7)利害関係者の関与、(8)コミュニケーションとブランド形成、(9)クロス・セクター協力、の9つの分野でそれぞれ課題に直面しています。

報告書は、上記に挙げたそれぞれの課題の詳細とこれに対するベスト・プラクティスを具体的な事例に則して分析した上で、結論として、リーダーシップの強化、戦略の再編、目標の明確化とベンチマークの設定、セクターを超えた協力の推進、コミュニティの利害関係者の関与強化、企業との協力強化、公共政策へのアドボカシー強化、などが必要だとまとめています。

報告は非常に網羅的ですし、それぞれの項目について、具体的な事例に則して分析・提案しているので読み応えがあります。何よりも、全国ネットワークであるインディペンデント・セクターが、上から目線ではなく、丹念に現場の声を拾い集めて作成した点で、幅広いNPOセクター関係者からの支持が得られることでしょう。

おそらく、以上の項目の幾つかは、今後10年の間に日本のNPOセクターが直面する課題でもあります。これにNPOセクターがどのように対峙していくのか。日本でも、NPOセクター自身のイニシアチブにより、このような網羅的な現状と課題抽出の作業が求められます。

https://www.independentsector.org/threads

Share MeFacebooktwitterlinkedinmailby feather

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。