少し古い情報ですが、今年の2月に、英国政府が、社会的価値法に関するレビュー報告を発表していますので紹介します。
社会的価値法というのは、英国の公共機関が、財やサービスの調達契約を行う際、入札にあたり、経済価値(入札価格の安さ)だけでなく、この契約により付加される社会的価値を考慮することを義務づけた法律です。この法律により、英国政府は、社会的価値の創出を目指す社会的企業の発展を目指すと共に、彼らの活動を定量的に評価する社会的価値評価の普及を実現しようとしました。
今回は、社会的価値法の導入以後の成果を客観的にレビューした報告です。レビューの結果、社会的価値法の導入は一定の成果を生み出していることが確認されたようです。他方、レビュー報告は、幾つかの改善を勧告しています。主な指摘事項は、社会的価値法をより周知させること、入札募集時の社会的価値に関するガイドラインをより整備して混乱を少なくすること、そして、社会的価値に関する評価指標をより整備していくことなどです。
ソーシャルセクターにとって、最大の収入源は、実は寄附ではなく財・サービスの対価収入であり、その多くの部分は公的機関からの受託収入です。ここに社会的価値を導入することで、ソーシャル・セクターにおける社会的価値志向を高め、社会的価値評価を普及させるという戦略は、この点で、大きな意味があります。今回のレビュー報告で、さらにこの社会的価値に対する取り組みが英国で進展することが期待されます。もちろん、その中には、社会的インパクト投資やコミュニティ投資なども含まれます。
なお、報告書には、社会的価値の評価手法として、金銭的リターンの計測を軸とするSROIと費用便益分析に加えて、幸福(well-being)測定や満足(satisfaction)測定が取り上げられています。社会的価値の定量化において、金銭面でのリターンだけでなく、こうした主観的な部分を定量化しようという試みが今後どのように発展していくかも要注目ですね。