スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー(SSIR)が、米国で初めて、ユタ州の成功報酬債(PFS)プロジェクトが投資家へのリターン支払いに成功した事例を紹介しています。
このプロジェクトは、特別教育予防プログラムです。発達障害など何らかの理由で特別な教育を受ける必要が潜在的にあるという子供達を対象に、保育園での予防的教育を与えることで、通常の学校プログラムに進学させるという内容です。
特別教育に進学した場合、幼稚園から高校まで通う必要があり、州政府の一人あたり追加負担は2,607ドルとなります。仮に、この予防措置が成功すれば、一人あたり経費×人数×在学年数分の予算が削減されます。今回のプロジェクトの結果、2013−14年で潜在的なリスクを持っていた110名のうち、1名以外は全員、通常のプログラムへの進学に成功したため、州政府は281,550ドルの経費を削減することが出来ました。
記事は、このプログラムが成功した背景として、ユタ州では、ソルトレイクのユナイテッド・ウェイを中核としたコレクティブ・インパクトの試みが定着していたことを挙げています。ビジネスやコミュニティ団体も巻き込んだコレクティブ・インパクトの取り組みがあったから、PFSが導入されても円滑にプロジェクトが進行したということです。
今回の成功を機に、ユタ州政府は、このPFSプログラムを州の正式なプログラムとして法制化し、これを推進するための委員会も立ち上げたとのこと。ここでも、リスクを民間に移転しつつ、予防プログラムの試行を行い、成功すれば正式プログラム化するというPFSの基本理念が活かされています。
コレクティブ・インパクトと社会的インパクト債が相乗効果を生み出しつつ、コミュニティの問題を解決していく。これは、新たなソーシャル・ファイナンスのモデルとして今後注目を集めそうです。詳しくは直接記事をご覧ください。