コミュニティにおける富の形成に向けて

日本でも地方創生が話題になっていますが、一部のメガシティとこれ以外の地域との格差の拡大は、(政治、経済、行政の一極集中が極端に進んでいる日本は例外的ではあれ)全世界共通の問題です。もちろん、米国でもこの問題は深刻です。

デモクラティック・コラボラティブが最近発表した報告書「コミュニティの富」は、この問題に取り組む米国の一つのソリューションのあり方を提示していて興味深いです。彼らの主張は、一言で言えば、「伝統的な大企業誘致、開発中心のアプローチを改め、コミュニティ内で資金が循環して富が蓄積され、その富がコミュニティメンバーに還元されるようなシステムを構築するアプローチに切り替えよう」というものです。

この実現のために、報告書は、コミュニティが持っている潜在的な資源の活用、コミュニティのオーナーシップの強化、地産地消や域内資金循環の強化、コミュニティのセクターを超えた協働の推進、生活賃金の確保や社会包摂を通じた経済セキュリティの確保、雇用創出、そしてこうした試みを実現するエコシステムの確立を掲げています。

私も共訳者の一人として関わった「スモールマートエコノミー」でも同じ主張が展開されていますが、大企業誘致型の地方開発政策は、企業がグローバルにサプライチェーンを展開できる今日、その有効性を失っています。自然災害でも、金融危機でも、あるいは単純に企業戦略の変更でも、企業はさっさとコミュニティを見捨てます。大企業を誘致してコミュニティの将来を託すのは、ギャンブル以外の何者でもありません。また、公共工事に依存した開発も応急措置にはなり得ても持続可能性を欠いています。米国で議論されているコミュニティに富を蓄積しようという試み、日本でも、いろいろと学ぶべき点は多そうです。

http://democracycollaborative.org/sites/clone.community-wealth.org/files/downloads/CitiesBuildingCommunityWealth-Web.pdf

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