スコットランドのCouttsが、「ミリオン・ダラー寄付報告2015」を発表しました。これは、英国、米国、中東、ロシア、中国、シンガポール、香港、南アフリカにおいて、1件あたり100万ドル(日本円で1億2千万円)以上の寄付案件を調査した報告書です。1件あたり100万ドル以上というのはまさに「メガ・グラント」なので、このデータは非常に貴重です。
報告によると、対象地域では、1,995件の該当寄付があったとのこと。総額は263億ドル(日本円で約3兆円)です。寄附者は、ビリオネアの個人や大企業、一部の財団などです。内訳を見ると、バフェットがゲイツ財団に対して行っている定期的な寄付(21億ドル)やアリババ・グループ香港のジョー・ツァイ氏による民間財団設立(11.8億ドル)、同じくアリババ・グループ中国のジャック・マー氏による民間財団設立(23.7億ドル)などから始まって、ロサンゼルス美術館への5億ドルの個人寄付など、多岐にわたっています。
こういう大型の寄付、個人的には「1%」の人たちによる「エリート・サークル内の寄付」という印象を拭いきれないのであまり好きではないのですが、とはいえ資産家が飽くなき利益追求に走るよりもこういう形で利益の社会的還元を行うことには意味があると思います。芸術支援であれ、チャリティであれ、人類は長い歴史を通じて、このような「パトロン文化」を育んできたわけですから。それに、美術館や病院、国際機関などでは、このような巨額支援は、その活動基盤の整備に大きな役割を果たしています。
この報告を読みながら、つらつら日本の寄付事情について考えてみました。はたして1件1億円以上の「メガ・グラント」はどれだけあるのでしょうか。一般人の知らないところで誰かが「陰徳」を積んでいるかもしれません。でも、新規の財団設立件数が2013年度2件という状況では、本当に数が限られているのでしょう。世界第三位の個人資産家大国の日本で、いかにして寄付文化を復活させるか、本当に重要な課題だと思います。