ザッカーバーグ氏のフィランソロピーモデル(続々編)

ザッカーバーグ氏のフィランソロピーに関するさらなるコメントです.

12月4日に、ザッカーバーグ氏自身のメッセージがポストされました。これによると、「財団を作ったら、その時点で免税になるけれど、財団には制約がある。自分たちにとって最も重要なものは、ベストの仕事を行う組織に資金を提供する柔軟性にある。その組織がどのような法人格を持っているかは関係ない。もちろん、LLCの場合、キャピタルゲインに課税されるけど、自分たちは払うつもりだ。」ということでした。

たぶん、キーワードは、「より効果的にミッションを達成するための柔軟性」なんでしょうね。

さて、これが、新たなフィランソロピーのモデルになるのかどうかを考える上では、「ザッカーバーグ夫妻が正しいと考えていること」と「社会がこれをどう受け止めるかということ」をいかにバランスさせるか、にありそうです。

振り返れば、あのゲーツ財団ですら、米国の教育政策に対する資金提供プログラムに対して、「公共政策に対する一民間財団の影響力が大きすぎる。これは民主主義なのか。」という批判がありました。まして、今回は、LLCという営利も可能な形態の投資団体ですから、反発はさらに大きくなる可能性があります。人によっては、どんなに良いことをしても、そこに「ザッカーバーグ夫妻の私的利益追求」を見いだそうとするかもしれません。これをどうクリアしていくのか(あるいは無視して邁進するのか)が、今後の彼らの活動の成功の鍵を握ると思います。

この話、実は、CSRとCSVの関係にも適用可能ですし、NPOとソーシャル・ビジネスの関係にも適用可能です。たとえば、日本企業は近年、財団の設立に消極的で、企業の社会貢献プログラムを通じた支援に重点をシフトさせています。中には、さらにCSVに移行しようとしているところもあります。また、NPO法人や公益法人の中には、認定をとって寄付控除を受けるよりも、一般法人のままで活動の自由度を広げたいというところが増えてきています。あるものは営利の社会的企業を選ぶでしょう。

これを「インパクト志向」の名の下に肯定するのか、それとも「非営利の商業主義化」として否定するのか。正解はなく、様々な事例を通じて多様な利害関係者が議論を積み重ねて、新たな「公益性」のコンセンサスを作っていくしかありません。そのためには、圧倒的な資金と人材を持った企業・資産家ときちんと対話できる市民社会の存在が不可欠であることは言うまでもありません。

https://www.facebook.com/zuck/posts/10102507695055801?fref=nf

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