助成財団は、基本財産の運用収入を活用して助成事業を行います。助成財団は、基本的に公益を目的に助成を行うわけですが、ではその基本財産の運用にまで「公益性」が配慮されていたかというと、必ずしもそうではありません。日本では、国債、公債が運用の中心なのであまり問題になりませんが、海外の財団はより積極的な運用を行っています。その結果、環境保護活動を行っている助成財団が基本財産の運用先として、化石燃料を使ったエネルギー産業に投資するという笑えない問題が生じたりします。
こうした事態を避け、助成財団の基本財産運用先に社会的責任投資のネガティブ・スクリーニングを導入しようというキャンペーンがあります。Divest-Invest Philanthropyです。彼らは、化石燃料を使った企業への投資を引き上げ(Divestment)、代わりに地球温暖化問題に取り組む企業に投資する(Investment)ことを財団に呼びかけました。これを受けて、グローバルに活動する約140の財団がキャンペーンに参加しています。
このDivest-Invest Philanthropyが、最近、「勇敢なフィランソロピー」を対象としたネルソン・マンデラ・イノベーション賞を受賞しました。これを機に、Divestment-Investmentの動きが加速することが期待されます。
社会的インパクト投資は重要ですが、財団の中には、基本財産を失うリスクを負いたくないとか、専従スタッフを持つ余裕がないなどの理由で、参加をためらうところが多いのが現状です。そのような財団でも、すでに市場が確立してきているESG投資であれば、参加は容易でしょう。そのような財団を後押ししてくれる支援組織として、Divest-Invest Philanthropyのような組織が、さらに増えるとよいですね。