社会的投資市場に関する議論が深まるにつれ、ますます助成財団の役割の重要性が明らかになってきました。特に先進諸国におけるコミュニティ開発金融、マイクロファイナンス、あるいは社会的インパクト債などの領域では、劣後部分を引き受けることでリスクをコントロールし、さらに信用供与やグラントなどで民間投資を補完する助成財団の役割が、社会的投資市場の発展に不可欠であるという認識が共有されつつあります。
こうした中、米国と欧州それぞれで、4月に画期的な出来事がありましたので紹介しておきます。
まず米国では、長い議論の末、内国歳入庁が助成財団のプログラム関連投資に関するガイドラインの改訂版を公開しました。この結果、米国の助成財団は、(1)海外へのプログラム関連投資、(2)一定の条件の下でのハイリターン投資、さらに(3)社会的企業へのエクイティ投資がそれぞれ可能になりました。今まで、内国歳入庁の裁量的判断に任せられていた部分が明確になったことで、今後、助成財団は積極的にプログラム関連投資を行うことが出来るようになります。
また、欧州では、オランダで欧州委員会、欧州開発銀行と主要大型助成財団、社会的投資仲介機関が一堂に会した2日間の会議が開催されました。会議では、欧州委員会の事務局長が基調講演を行い、欧州開発銀行が積極的に社会的投資への助成財団の参加を呼びかけるなど、欧州の方でも助成財団の取り込みが本格化しています。今後、会議参加者を中心に作業グループが立ち上げられ、助成財団のミッション関連投資をどのように促進するかをめぐって、制度設計が行われる見通しです。
大西洋を挟んだ欧州と米国での動き。もちろん、その中間に位置する英国は、すでに助成財団のプログラム関連投資に関するガイドラインを整備しています。グラントから社会的投資へと言う流れは、今後、さらに欧米諸国で加速化しそうです。
しかし、残念ながら日本では、三菱商事震災復興支援財団や信頼資本財団、日本財団など一部の先駆的な財団以外、この領域に対する関心が低いというのが現状ですが、社会的投資マーケットの拡大のために財団の参加を促すというのは日本でも重要な課題であることは言うまでもありません。日本でも、早急に制度設計に取りかかる必要があるでしょう。