2006年、ボストン大学「富とフィランソロピー」研究センターは、 今後50年間にわたり米国はフィランソロピーの黄金時代を迎えるだろうというユニークな報告書を発表しました。理由は、団塊世代が引退し、積極的にフィランソロピーに取り組むと共に、遺産相続の際に、多くの資金が寄附という形でフィランソロピーセクターに流れ込むことが期待されるからです。
その後、2007年にリーマン・ショックが起きました。その結果、米国を中心に世界経済は深刻な不況に陥るわけですが、それは、「フィランソロピーの黄金時代」にどのような影響をもたらすでしょうか。ボストン大学は、こうした問題意識を踏まえ、ボストン周辺地域を中心に調査・分析した新しい報告書を発表しました。これによると、確かにリーマン・ショックにより資産は減少しているが、団塊世代の生涯寄附の遺贈の水準は引き続き高く、フィランソロピーセクターが明確な戦略を持ってアプローチしていけば、フィランソロピーの黄金時代は可能であるとのことです。
日本でも、高齢化が深刻な問題として議論されています。これから20年から30年の間に、確実に大規模な資産の世代間移転が起きます。これを世帯間に限定すれば、社会的格差は固定化・拡大化していきます。相続税という形で国が所得の再分配を行うことはもちろん必要ですが、硬直した行政システムと膨大な財政赤字のためにその効果は限定的です。寄附税制を相続税に拡大し、かつその対象を不動産や有価証券などに拡大すれば、多くの資金がフィランソロピーセクターに流れ込みます。それは、政府やマーケットメカニズムだけでは解消できない様々な社会的問題の解決につながります。
日本のフィランソロピーも「黄金時代」を迎えるためには、日本の相続財産寄附や遺贈制度を更に充実させると共に、高齢者をフィランソロピーに巻き込むための非営利セクター側のファンドレイジング努力が求められます。
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