UBSとLSE (London School of Economics)が「インドのフィランソロピーを解明する」という報告書を発表しました。アジアのフィランソロピーの現状についての情報が不足している中、インドのフィランソロピーの歴史的発展から現状と課題までを網羅的に概観しようという報告書は大変参考になります。
インドでは、歴史的にフィランソロピーが発達していました。その担い手は、当初、王族や大地主が中心でしたが、近代化と共に、企業やフィランソロピストが新たに参加してきます。現在では、企業や実業家が中心となり、欧米のモデルを踏襲した制度的な助成財団の形成が試みられています。
アジア のフィランソロピー全般に言えることですが、日本(と一部東アジア地域)を除けば、フィランソロピーの担い手は基本的にファミリー・ビジネスであり、家族フィランソロピーと企業フィランソロピーの境目があまり明確ではありません。また、チャリティの要素が強く、支援対象も宗教団体やコミュニティ団体が中心です。こうした中、企業や実業家による専門的な助成財団の形成は、こうしたアジアのフィランソロピーに新たな革新をもたらすことが期待されます。ディアスポラ・フィランソロピーという、海外で成功した移民とその子孫が、母国に対してサポートを行うという新しい形のフィランソロピーが、これをさらに補強しています。インドもまた、フィランソロピーの新たな時代の幕開けを迎えつつあります。
報告書は、このような新たな動きを加速させるために、(1)フィランソロピーとNGOを結ぶ仲介団体の育成、(2)専門的なグラント・メイキングを担うスタッフの育成、(3)フィランソロピー・セクターを担う利害関係者とその活動についての定量データの収集とマッピング、の3つが必要だと結論しています。その通りだと思いますし、実はこの問題、現在の日本のフィランソロピー・セクターの発展を考えていく上でも参考になる意見だと思います。
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