社会的インパクト投資は非営利のニーズに本当に応えているのか?

社会的インパクト投資が近年注目を集めている理由は幾つかありますが、最も大きな理由は、NPO自体が収入基盤をサービス料に移行させていく中、サービス料収入を増大させるためには、従来のようなプロジェクト・ベースのグラントや、ランニング・コストに充当する寄附金・会費ではなく、設備投資や人員補強などのキャパシティ・ビルディングのための「資本」を調達する必要にあります。

しかし、社会的インパクト投資が機能するためには、一定の条件が必要です。定期的な収入基盤があり、将来的に投資を返済することが出来るのは最低限の条件ですが、これ以外にも、理事会の理解を得たり、ある場合にはステイク・ホルダーの理解を得たりする必要があります。これは社会的企業には通常あてはまりますが、NPOの場合には、すべてが該当するわけではありません。このため、社会的インパクト投資をNPOに適用する場合には一定の配慮が必要です。

この問題を考える上で参考になるのは、英国チャリティ・コミッションがボランティア活動研究所に委託して作成した調査報告「チャリティと社会的投資」です。この調査は、社会的インパクト投資に関わっている非営利団体、社会的インパクト投資団体、中間支援団体などへのヒアリングに基づいて作成されたレポートですが、調査結果は、非常に示唆に富んでいます。

まず、NPOの多くは、社会企業と異なり、キャパシティ・ビルディングのための資本よりも、経営を維持するためのつなぎ資金の方をより求めていることが分かりました。このためには、エクイティではなく低利のローンの方がより有効になります。また、NPOの理事の多くは投資やローンを通じて財務上のリスクが高まることに非常に否定的です。さらに、投資リターンを投資家に返却するための経営を行うことが、本来のミッションからの遊離を招くことも危惧しています。

逆に、社会的インパクト投資団体側にも問題があります。必ずしも非営利を専門としていない投資団体の場合、非営利についての基本的な理解がない場合が多々あり、これが問題になっています。例えば、英国の場合、非営利団体には収入活動に一定の制限があったり、また財団の方にもミッションと関係のない分野に対して低利の投資を行うことに制限があったりしますが、これを知らない投資団体が誤ってこのような条件をオファーすることが多々あるという結果が出ています。

調査報告は、これ以外にも、非常に興味深い指摘を行っています。ご関心のある方はぜひ一度お読み下さい。なお、報告の結論は、非営利団体と社会的インパクト投資団体の双方がお互いをよりよく理解すること、そして非営利団体のニーズに即して社会的インパクト投資市場を発展させていくことが重要であるとしています。この点も、非常に重要なポイントだと思います。

http://www.charitycommission.gov.uk/media/170711/social_investment.pdf

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