米国格差社会解消に向けた10億ドルのグランド・デザイン

深刻な格差・貧困の問題にあえぐ米国では、低所得者に対する経済機会創出に向けた取り組みが進められています。最近も、CITI財団が都市貧困層に対する経済機会創出プログラムに2000万ドルを投じることを表明しました。こうした中、ブリッジスパン・グループが10億ドルを投じて格差・貧困の問題に取り組もうというビジョンを発表しました。

「すべてのアメリカ人に経済機会を創出する10億ドルの賭け」と題された報告書は、格差・貧困問題解消のための経済機会創出に向けたグランド・デザインを描いています。

報告書は、以下の4つの分野に焦点を置きます。

■技能訓練と資産形成
⇒幼児教育から中等教育、職業訓練などによる技能訓練を充実させると共に、低所得者層でも大学進学が可能となるよう子供口座などを活用して適切な資産形成を図る。

■文化的・社会的障壁の克服
⇒貧困層の社会・経済的上昇を阻む様々な偏見を解消し、社会的排除を克服するための取り組みを行う。

■コミュニティの改善
⇒低所得コミュニティの劣悪な環境が、貧困層の拡大再生産をもたらしているという認識を踏まえ、低所得コミュニティにおける雇用の創出や、教育・医療・福祉サービスの向上、治安の改善などを目指す。

■「成功モデル」の実行とスケールアップのためのインフラ整備
⇒経済機会創出の領域においては、すでに具体的なエビデンスに基づいて機能することが検証されている「成功モデル(What Works)」が存在する。この事例や評価結果などの情報を共有し、新たなプラグラムを策定する際にこうした「成功モデル」の経験が活用されるようなインフラを整備する。

以上の4つの分野を実現するための方策として、報告書は、15の具体的なプログラムを提案します。その中には、低所得者の金融包摂や子供口座の開設、教育制度改革、司法制度改革、移民制度改革、コミュニティ開発人材の育成などが含まれています。

今回の報告書のユニークな点は、単に処方箋を提示するだけでなく、現状を分析し、さらに事業がもたらす社会的リターンを提示している点にあります。

現状分析については、多くの財団関係者やソーシャル・セクター関係者にヒアリングを重ね、現状と課題、そして可能な方策についての分析を行っています。このプロセス自身が、格差・貧困問題の解決に向けた利害関係者のネットワーキングと合意形成に寄与している点は見逃せません。

社会的リターンについても、報告書は、1ドルあたり、分野ごとに3ドルから15ドルの社会的リターンがあると試算しています。経済機会創出に向けた取り組みが、「社会的コスト」ではなく、「社会的価値創出に向けた投資」であるというメッセージを発することで、フィランソロピー・セクターや政府、企業の取り組みを促していると言えるでしょう。

日本でも、格差・貧困の問題は深刻です。最近も、日本財団が、子供の貧困対策のために50億円を投じることを発表しました。そのこと自体に異論はありませんが、6人に1人の子供が貧困状態にある日本において、50億円を使って各地に支援センターを作ることのインパクトは限られているという現実も忘れてはなりません。問題解決のためには、政府や企業の協力を得て、より大規模な取り組みを行うことが不可欠です。

おそらく、必要なことは、今回の報告書のように、多様な関係者へのヒアリングを踏まえてグランド・ビジョンを提示し、政府、企業、NPOが共に問題解決に向けて取り組んでいくことが出来るようなプラットフォームを整備することでしょう。これこそが、フィランソロピーセクターに求められている役割ではないかと思います。

http://www.bridgespan.org/…/Billion-Dollar-Bets-for-Economi…

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