共有経済の民主化を目指す情報プラットフォーム

「共有経済(Sharing Economy)」が拡大を続けています。最近も、トヨタによるライド・シェア大手ウーバーへの出資が報じられました。当初、草の根の運動として開始された「共有経済」において、大資本による営利化が進行しつつあります。

これはある意味で、ソーシャル・ベンチャーのスケールアップの理想的モデルだと言えます。ライド・シェアにより、一般の人達が空いた時間を使ってタクシー・サービスを提供することは、新たな収入機会や、過疎地などにおける新たな移動手段の提供につながります。資本投下によるスケールアップは、まさにソーシャル・イノベーションでしょう。

しかし、大資本による営利化はが「外部不経済」をもたらすことも忘れてはなりません。

ライド・シェアの場合は、タクシーよりも安い価格を提供することでタクシー運転手の生活を脅かします。低価格競争のために賃金水準が下がれば、貧困の連鎖を招きかねません。

また、共有経済のもう一つの代表例である「民泊」についても、都心部に空きマンションを購入する資金力を持った富裕層が、続々とこの分野に参入してきます。これは、マンション価格の高騰、マンション住民への騒音被害、ホテルや民宿などの業務圧迫を招きます。本来、居住施設であるはずのマンションが、「民泊」のために投機の対象になり、結果的に、住民がそのコストを払うことになります。

このように、本来、コミュニティのメンバーが、自分たちのリソースを共有することで、社会的紐帯を強め、相互扶助を行おうという発想だった「共有経済」が、大資本参加により変質しつつあります。これをどうすればよいでしょうか。

長い前置きになりましたが、この問題を解消するために、The Internet of Ownership Projectが立ち上がりました。これは、「共有経済」の民主化を促進するため、「協同組合」形式の共有経済の事例を広く世界中から収集し、ウェブサイト上で共有することで、「プラットフォーム協同組合主義(Platform Cooperativism)」を推進しようというプロジェクトです。

プラットフォームでは、ワーカーズ・コープや協同組合などの事例だけでなく、プラットフォーム協同組合主義に関する文献やツールなどの情報も掲載しており、この分野に関心を持つ人達の貴重な情報リソースとなることが期待されます。

実際、このプラットフォームを覗くと、協同組合型のライド・シェアの事例から、共有経済を進める上で不可欠なオンライン・プラットフォーム構築のためのコード・リソースまで、多様な情報が共有されていて参考になります。インターネット上での情報共有が、コミュニティ資産の再活性化を促し、さらに生産者と消費者を直接つなぐことで地産地消や倫理的購入を促進していることがわかります。

このプラットフォーム、現在は、英国、米国、フランス、ドイツ、スペインが参加しています。ぜひ日本からも参加して情報を提供して頂ければと思います。

http://internetofownership.net

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