市民社会と財団との新たな関係構築に向けて

CIVICUSの2015年度市民社会報告にフォード財団のウォーカー理事長が寄稿しました。現在のグローバル市民社会を取り巻く現状に警鐘を鳴らし、財団を含めたドナー・コミュニティと市民社会との新たな関係構築を提唱している興味深いエッセイだったので紹介したいと思います。

ウォーカー理事長は、まず、現在のグローバル市民社会を取り巻く2つの脅威を取り上げます。

その一つは、外的脅威です。現在、ロシア、中国、カンボジア、中東・アフリカ諸国等々の権威主義国家において、市民社会団体の活動に対する制限が強まっています。国際NGOの幾つかも撤退を迫られています。これは、グローバルな市民社会の活動に大きな制約を課す恐れがあります。

もう一つは、内的脅威です。国際機関や財団などのドナーの多くが、成果志向を強調し、定量的なインパクト評価を前面に打ち出しています。それ自体は必要なことですが、これをあまりにも強調しすぎると、市民社会団体が開発機関の下請けのサービス事業機関となり、短期的な成果の最大化に向かわされることになります。これは、ガバナンス、情報公開、アドボカシー、人権保護などの市民社会が本来担わなければならない役割を阻害する恐れがあります。

ではこの2つの脅威に立ち向かうためにはどうすれば良いのでしょうか。ウォーカー理事長は、財団や開発機関に対し、「ひも付き」でない「長期的な視野に立った」「基盤整備支援」にコミットするように呼びかけます。基盤整備は、個別の機関のキャパシティ・ビルディングもあれば、より広い視野に立ったエコ・システムの構築支援もあります。その上で、市民社会団体に対しても、結束して、支援団体に対し、(プロジェクト経費だけでなく)運営経費への支援を強化することを働きかけるよう呼びかけています。市民社会団体自身も、この危機に立ち向かうためには行動する必要があるというのが彼の主張です。

既にこのコラムでもお伝えしたとおり、フォード財団は、大規模な市民社会団体のキャパシティ・ビルディング支援に乗り出すことを表明しています。この背景には、以上のような問題意識があったのですね。これからのフォードの動き、そしてこれに追随するであろう米国の他財団の動きが気になります。日本でも、同様の議論が活発化することが望まれます。

http://civicus.org/images/SOCS2015_ESSAY27_HowCanWeHelp.pdf…

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