米国ノンプロフィット・クオータリー誌の報道によると、ロサンゼルス郡の監督委員会が、全会一致で同郡内の非営利組織に対するフルコスト・リカバリー方針を徹底するよう決議し、郡長に提出したそうです。
決議内容は、OMBの新たな共通ガイドラインに基づき、連邦政府・州政府などの補助金を郡内の非営利組織に出す場合には、この事業を遂行するのに必要な管理的経費をきちんと負担すること、及び実行計画策定のために郡長は速やかに郡内の非営利組織との協議を開始し、120日以内に監督委員会に計画を提出すること、の2点です。
非営利組織のフルコスト・リカバリーのポイントは、政府が担うべき社会福祉サービス事業などの事業を非営利組織に業務委託したり補助金を出したりする場合、事業費のみならず、これに必要な管理的経費を支払うことで非営利組織が低賃金の「下請け」となることを防止することにあります。本来、公共機関が担うべき業務を非営利組織に代替させる以上、これに見合うコストは負担すべきと言う発想です。
今回のロサンゼルス郡の決議が実現するまでには、ロサンゼルス郡の非営利組織ネットワークの強力なロビーイングとコミュニティ財団の後押しがあったとのこと。「カリフォルニア州フルコスト・イニシアチブ」がカリフォルニア非営利組織連合と3つの郡の地域グラントメーカー連合による推進されました。さらに、決議に伴い、財団の間でも、適切な管理的費用をグラントに計上する動きが進んでいるとのことです。
非営利組織は、ボランティアを活用し、寄附金を調達することで、公共機関が行うよりも効率的でパーソナルな社会福祉サービスを提供することが期待されます。しかし、だからといって、不当に運営管理費が削減され、非営利組織が低賃金労働を強いられるということがあってはなりません。今回の決議により、全米レベルでフルコスト・リカバリーが進展することが期待されます。
この問題については、日本でも、既に議論が進んでいますが、改めて、非営利組織に対する業務委託や補助金をフルコスト・リカバリーの観点から見直す必要があるでしょう。そのためには、各地域の非営利組織ネットワークやコミュニティ財団が政府・自治体に働きかける必要があることは言うまでもありません。
http://nonprofitquarterly.org/…/l-a-county-board-of-superv…/
参考までに、このガイダンスの制定と着実な実施について全米レベルでのアドボカシー・キャンペーンを行ってきた全米非営利団体協議会のサイトもご紹介しておきます。ガイドライン自身は、OMB(全米行政予算管理局)が2014年12月に策定しましたが、これが実効性を持つためには、連邦政府各部局や州政府がこのガイドラインを遵守する必要があります。このために、広く全米の非営利組織ネットワークにアドボカシー活動を呼びかけています。非営利組織アドボカシーの模範的な事例だと言えるでしょう。