社会的インパクト債が成功するための最大のポイントは、効率的にインパクトを達成したという実績が客観的に実証されているプロジェクトを選択すると言うことです。社会的インパクト債は、アイディア段階のプロジェクトに投資するツールではなく、成果が実証済みのプロジェクトをスケールアップするのに投資するツールだからです。
しかし、実はこれは簡単ではありません。投資である以上、客観的なデータに基づいてインパクトを実証しなければならず、このためには、専門家を雇用してコンサルティングやリサーチを行わなければなりません。その経費は社会的インパクト債へのプロポーザルの準備のための経費としてNPOが支払うコストになります。しかし、これはNPOにとって負担となります。
リビング・シティズとサード・キャピタル・パートナーズが新たに立ち上げた成功報酬債構築ローンは、こうした需要に応えるための新たな資金提供プログラムです。このプログラムは、米国の社会的インパクト債プログラムである成功報酬債に応募しようという特定目的ビーイクル(SPV: Special Purpose Vehicle)に対し、こうした案件形成の費用をローンの形で提供します。ローンの返済は、社会的インパクト債が承認されれば、その報酬の一部を充てることになります。
こう書くと、「では、承認されなかった場合にはどうなるのだろう?」という疑問がわきます。実は、このローン・プログラムは、ドイツ銀行アメリカ財団とシカゴ・コミュニティ・トラストから支援を受けていると言うことです。ということは、仮にこのローンを使っても成功報酬債に採択されなかった場合には、返済が免除されるか少なくとも一部減免されるだろうと推測されます。
社会的インパクト債は、英国、米国で拡大し続けています。しかし、資金供給が増えても、これを受けるトラックレコードとキャパシティを持ったプロジェクトがなければ社会的インパクト債は成立しません。英国の場合、政府が社会的成果基金などの公的基金を設立して案件形成を支援していますが、民間主導の米国ではこのようなローンプログラムという形になったのでしょう。この制度の違いが、今後、どのような両国間のパフォーマンスの違いに結びついていくのかも気になりますが、何よりも重要なことは、社会的インパクト債が制度として定着していくためには、このような案件形成のためのコスト負担も含めたインフラの整備が必要だという点だと思います。
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