米国議会で進む「成功報酬債」関連法制化の動き

成功報酬債(PFS: Pay for Success)は、米国版の社会的インパクト債です。ホワイトハウス主導で開始されたこの新たなファンディング・プログラムに対し、議会で法制化の動きが続いています。

社会的インパクト・パートナーシップ法は、革新的な成功報酬債の枠組みに対して連邦政府が支援すると共に、プログラム評価を強化することで成果志向なものにしようという法案です。これについては、下院歳入委員会に法案が提出されて議論され、確実に支持議員を増やしているとのこと。しかし、年内の本会議への上程は難しいようです。

これに関連し、「エビデンスを基礎とした政策委員会」を求める法案は、下院において超党派で提案・可決され、上院でも委員会決議を終えて本会議での審議待ちまで来たようです。この法案は、連邦政府の政策決定や予算策定の際に、エビデンスに基づく成果測定のための手法や手続きを開発する委員会を設置しようというもので、これが導入されると、米国の政策はより成果志向が強まることが予想されます。社会的インパクト債の元々の発想は「成果報酬(Pay for Results)」プログラムにありますから、この法案は社会的インパクト債と親和性が高いと言えます。

成果志向への流れは、80年代から続くニュー・パブリック・マネジメントの中心的な課題の一つですから、それ自体は新しいものではありません。しかし、法制化を通じて制度化が進めば、社会的インパクト債の導入にとっては追い風となります。また、エビデンスに基づく事前・事後の成果チェックが導入されれば、予算の無駄なばらまきを排し、より効率的な財政執行をもたらすことが期待されます。

ただ、成果志向の政策はすべてがバラ色というわけではありません。成果志向とのトレードオフで従来の社会福祉予算が削減される可能性は十分にあります。また、成果志向型の事業は、事業者に「いいとこ取り(Cream Skimming)」への誘因を与えますので、成果達成のために、本来最も支援を必要としている層が事業から排除される可能性があることは、過去の様々な事例が証明しています。さらに、評価基準の導入が恣意的になるという問題も抱えています。

米国での動きが、今後どの方向に向かっていくか、引き続き注視していきたいと思います。

http://www.newprofit.org/america-forward-state-of-play-of-…/

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