ハーバード・ビジネス・レビューにブリッジズ・ベンチャーズのブライアン・トレスタッドが寄稿しました。彼は、インパクト投資の先駆者の1人で、現場を長く見ているので説得力のある議論を展開しています。
今回の寄稿の趣旨は、インパクト投資が一般投資家によりアピールするため、もう一度インパクト投資業界を見直そうというものです。インパクト投資も発展を続けており、多くの投資家が注目するようになりました。しかし、実はインパクト投資は非常に多様で、FinTechの最先端のテクノロジー・ベンチャーから、ペルーの僻地の貧困層向けのマイクロファイナンスまで、投資先は多岐にわたっています。このため、一般投資家は、どのような投資戦略を立てればよいのかについて少し混乱しており、このために一般投資家の参入が阻害されているのではないかというのが彼の問題提起です。おそらく、マーケットの発展に伴い、一律に「インパクト投資」という言葉でくくる時期は終わった、ということなのでしょう。
そこで、トレスタッドが提唱するのが、投資家向けに以下の3つの分野におけるガイドラインを策定し、これによって投資家の意思決定を支援しようというアイディアです。
1)インパクトの種類
→どのような社会的インパクトの達成を目指すのかを、場所、プロセス、環境への影響、製品、パラダイムの5つのカテゴリーに沿って明確化
2)インパクトの強度と直接性
→インパクトの対象となる集団とインパクト達成までの時間の明確化
3)インパクトのリスク・プロファイル
→インパクトがもたらす負の側面や失敗のリスクの明確化
トレスタッドは、これを踏まえて、最終的にインパクト・マトリックスの策定を提案しています。これは、縦軸に金銭的リターンに関するアセット・クラス、横軸に上記のカテゴリーに沿ったインパクト・クラスで構成されるものです。これを投資家に提示すれば、投資家はよりインパクト投資の判断がやりやすくなるというのが彼の提案です。
寄稿では、上記の提案以外にも、投資マネージャーが、インパクトを最低限に抑え、利益を最大化することがないよう、インパクトについての信託責任を制度化しようという面白い提案も含まれていました。やはり実務家の提案は、経験に裏打ちされているため、説得力があります。
おそらく、彼の提案を踏まえて、これからGIINかハーバードのインパクト・コラボラティブあたりで、こうした新たなマトリックスの策定作業が始まるのでしょう。インパクト投資マーケットは、着実に市場制度の整備が進められていきそうです。
https://hbr.org/…/making-sense-of-the-many-kinds-of-impact-…