各国で導入が進んでいる社会的インパクト債ですが、これがさらに拡大していくためには、単に資金を用意するだけでなく、社会的インパクト債を運営できる組織と人材を育てていく必要があります。
特に、社会的インパクト債では、案件を組成する前提として、成果の実績が定量的で検証可能な形で蓄積されていること、さらに社会的インパクト債導入後も成果の定量的モニタリングと評価が着実になされることが不可欠です。このためには、RCTや費用便益分析の手法に習熟し、かつ対象となる分野の評価に携わった経験がある専門家の参加が必要です。専門家の信頼できる評価結果があって初めて、社会的インパクト債の案件組成が可能となります。
現在、英国や米国では、社会的インパクト債の案件組成を支援する予備グラント・プログラムが立ち上げられています。たとえば、米国の成功報酬債を運営している米国コミュニティ・サービス公社は、成功報酬債の案件組成を支援する専門機関に資金を提供しています。これらの専門機関は、米国の州政府や自治体、及び事業者に対してフィジビリティ調査や案件形成のためのアドバイスやテクニカル・アシスタントを実施します。現在、以下の団体が支援を行っています。
■住居支援公社
→低所得者向け住居サービス分野の案件形成
■子供の成功研究所
→成果志向の児童教育分野の案件形成
■全米犯罪・非行対策協議会
→青少年非行・犯罪予防分野の案件形成
■サード・セクター・キャピタル・パートナーズ
→青少年支援分野の案件形成
■ユタ大学政策イノベーション・ラボ
→成功報酬債全般における案件形成
社会的インパクト債は、ユタの事例に典型的に見られるように、データの信頼性が鍵を握ります。公的機関が民間金融機関に資金を出す以上、信頼性、妥当性、透明性が不可欠です。市民や専門家の厳しいチェックを受けるためには、以上のような専門機関による事前の案件形成支援が欠かせません。この予備的案件形成支援メカニズムは、今後、社会的インパクト債発展に必須のエコ・システムとなると思われます。
http://nationalservice.tumblr.com/…/new-opportunities-to-pa…