BRIDGEは世界のソーシャル・セクターに革命をもたらすか?

BRIDGEプロジェクトをご存じでしょうか。Basic Registry of Identified Global Entitiesの略です。日本語に訳すと、グローバル団体識別情報基礎登録システムとでもなるのでしょうか。簡単に言えば、世界中のソーシャル・セクターの団体すべてに、マイナンバーのような基本番号を割り当てようというプロジェクトです。現在は、基本番号を割り当てているだけですが、今後は、ガイドスターのように、団体情報を掲載し、データベースとしての機能も持たせようとしています。最近、その第一弾として、団体名かBRIDGE番号での検索がオンライン上で可能になりました。

このプロジェクト、もともとはオミディヤ・ネットワークが立ち上げたものですが、現在は、米国財団センター、グローバル・ギビング、ガイドスター、テクスープの4団体の共同プロジェクトになっています。資金も、ゲイツ財団、Google、ヒューレット財団その他が提供しています。

この陣容を見るだけで、このシステムが、今後、国際的なソーシャル・セクター・データベースのスタンダードになり得る可能性を持っていることが分かります。既に、財団センターは、着実に国際社会の財団情報を蓄積しつつあります。ガイドスターは、米国での非営利団体データベースとレーティングシステムの成功を受け、これを世界各地で展開しつつあります。グローバル・ギビングは、開発途上国における開発NGOの組織化を進めています。彼らが目指しているのは、米国で確立したスタンダードのノウハウを基礎に、これを国際的なスタンダードに拡張することでしょう。

順調にいけば、BRIDGEは、ソーシャル・セクターにおける資金提供団体と事業団体を網羅し、先進国と開発途上国の両方にまたがるデータベースとなる可能性があります。実際、各団体が持っている情報を統合し、すでに300万近くの団体情報が集まっているとのこと。もちろん、この中にはダブりがあるでしょうし、また架空の団体もあるでしょう。現在、BRIDGEは、データを整備して一貫したデータベースの構築作業を行っているとのことです。

仮に、BRIDGプロジェクトが正式に動き出せば、何が起こるのでしょうか。助成財団から見ると、今まで信頼できる助成先を発掘するための作業が、データベース上でのデュー・ディリジェンス情報や過去の実績情報で大幅に簡略化できるため、コスト削減が可能となります。財団によっては、BRIDGE番号を持った団体のみに助成を限定するところも出てくるでしょう。事業団体にとっても、助成先の支援を受けるために、番号の入手が不可欠になってくると思われます。将来的には、現在、ガイドスターが行っているようなレーティングが適用されるようになるかもしれません。

これはある種の革命です。データベースを活用することで、助成金や社会的投資は一気に合理化が進みます。国境を越えたファンド・レイジングが発展し、寄付マーケット自体も拡大する可能性があります。他方で、ソーシャル・セクター団体の補足もよりシステム化されます。情報の把握は、ある意味で統制にもつながります。運用次第では、簡単に自分たちの気に入らない団体を排除することも可能になります。

いずれにせよ、日本のソーシャル・セクター団体で、今後、国際的なファンドレイジングの可能性を検討している団体は、このデータベースへの登録を真剣に考える必要があるでしょう。また、日本NPOセンターや公益法人協会などの全国組織は、このプロジェクトが日本のソーシャル・セクターにもたらしうる影響を早い段階から精査していく必要があるかと思います。

https://bridge-registry.org

Share MeFacebooktwitterlinkedinmailby feather