社会的インパクト債の主流化が進みそうです。タイム誌がオンライン上で、好意的な記事を掲載しました。記事は、米国であれほど対立の深い共和党と民主党が、社会的インパクト債については、連邦政府レベルでも州政府レベルでも超党派で社会的インパクト債を推進しているとした上で、きちんと設計されていれば以下のような導入のメリットがあると整理しています。
1)支援を必要としている人にはプログラムを提供
2)納税者には説明責任をきちんと果たす政府を提供
3)パフォーマンスの高い非営利組織には資本を提供
4)投資家には財務/社会双方におけるリターンを提供
ワシントンポストも同様の記事を掲載しており、また全米ネットワークのABCニュースも社会的インパクト債を取り上げています。さらに、リベラル系シンクタンクのブルッキングス研究所は、先日、保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートと共同で米国が直面する格差・平等にどのように対応するかという共同研究の調査報告を出しましたが、これを踏まえて、2月末には社会的インパクト債をテーマにしたシンポジウムを開催するようです。
米国は、言うまでもなく今年は大統領選の年です。3月のスーパーチューズディの結果を見ないとまだ方向性は言えませんが、現時点では、エスタブリッシュメントが苦戦しており、ヒラリーは何とか持ちこたえているものの、ジェド・ブッシュは撤退しました。代わりに台頭しているのが、格差・平等の問題を全面的に打ち出しているバーニー・サンダースと、過激な発言ばかりが取りざたされているけれども政策面ではかなり大衆寄りのトランプです。
この構図を見る限り、「格差・平等」にどう対応するのかが今回の選挙の大きな争点になりそうです。社会的インパクト債がこれだけ注目を集めるのも、この問題に「財政出動なし」で取り組むことが出来るツールとしてアピールしているからでしょう。
個人的には、このような「政治化」がもたらす悪しき副作用が気がかりではありますし、社会的インパクト債を巡る市民社会側の議論は必ずしも肯定的なものばかりではないという点を強調したいと思いますが、いずれにせよ、「社会的インパクト債の主流化」はさらに加速しそうです。