社会的インパクト投資に関心をお持ちの人なら一度は耳にしたことがあるIRIS (Impact Reporting and Investment Standards)。グローバル・インパクト投資家ネットワーク(GIIN)が開発したインパクト投資用のインパクト評価と報告指標のカタログですが、さらに進化を遂げつつあります。
今回、IRISは金融包摂の領域で標準化を進めているCeriseのSPI4とIRISの連携を発表しました。SPI4はマイクロファイナンス団体に投資する際のデュー・ディリジェンスや投資報告の標準を定めたものです。IRISは、すでに米国のコミュニティ開発銀行のソーシャル・パフォーマンス指標や、開発途上国のマイクロファイナンス機関のソーシャル・パフォーマンス指標との連携を進めていますが、SPI4を加えることで、さらにマイクロファイナンス・セクターとの連携が加速しそうです。
今回の連携は、IRISの今後を占う上で、興味深いと思います。
IRISは、その名の通り、インパクト報告・投資基準として、「報告」分野も視野に入れていました。しかし、IRISの立ち上がり時点では、投資分野毎のアウトカム指標をカタログ化しただけで、投資のインパクト評価に使えるだけのものでしかないという印象を与えました。しかし、その後、IRISは、社会的会計・監査やデュー・ディリジェンスのための社会性評価指標、さらにグローバル報告イニシアチブなどとの連携を進め、デュー・ディリジェンスからモニタリング、インパクト評価、社会性報告に至る一連のプロセスのすべてにおいて適用可能な指標カタログへと進化しつつあります。これは、言い換えれば、社会的インパクト投資のすべての局面においてIRISが必要とされるようになることを意味します。
さらに、今回のSPI4との連携により、IRISは、マイクロファイナンス分野での標準指標との連携が強化されます。これは、社会的インパクト投資において最もマーケットの整備が進んでおり、規模も大きなマイクロファイナンス市場への進出がさらに加速することを意味します。マイクロファイナンスはmiXのようなマーケットのデータも整備されていますし、ソーシャル・パフォーマンス指標も標準化が進んでいますから、IRISは大きな市場拡大のチャンスを手にすることになるでしょう。
IRISは、現在、IRIS 4.0についてのコメント・レビューの最終段階に入っており、まもなく公開される予定です。これにより、どのような形で社会的インパクト評価・報告の標準化が進むのか、今後の動向が注視されます。