近年、社会的投資に対する関心は国際的に広がっています。英語圏のみならず、大陸の欧州も例外ではありません。こうした流れを受け、最近、欧州委員会は、社会的投資に関心を持つ企業CSR担当者、金融機関、個人投資家などを対象に社会的投資ガイドブックを公開しました。
あのお堅い欧州委員会がつけたタイトルは「ソーシャル・ファイナンスのレシピ」。でも、副題の「ソーシャル・ファイナンス商品・マーケット開発事業のデザイン・実務についての実践的ガイド」が示すとおり、内容は充実しています。
そもそも、社会的投資などのソーシャル・ファイナンスが発展する上での障害の一つは、営利の社会的投資家でした。ソーシャル・ファイナンスの市場規模が小さく、財団やフィランソロピー投資家と呼ばれる人達が扱っている間は問題はなかったのですが、市場が拡大し、メインストリームの投資家や企業人が参入してくると問題が生じたのです。それは、非営利セクターに対する基本的な理解の欠落によるものです。非営利団体は利益分配が出来ない、という基本的な事実さえ知らずに参入してきた投資家がいたために、非営利団体側との摩擦が生まれてしまいました。
この意味では、営利投資家が、ソーシャル・ファイナンスをきちんと理解することが出来るように作り込まれた今回の「レシピ」は、欧州委員会のお墨付きもあり、今後の欧州におけるソーシャル・ファイナンス市場の発展に寄与するものと思われます。
「レシピ」の基本的な構成は、社会的投資事業の立ち上げから評価までを以下のプロセスに分け、それぞれについて基本的な知識、留意点、実践方法などを解説する、というものです。
1.社会的企業事業分野とソーシャル・ファイナンス市場の評価
2.ビジョン策定、目標と社会的付加価値の明確化
3.投資戦略の構築(必要に応じ、支援戦略も構築)
4.パイロット事業の実施
5.インパクト測定と評価
6.振り返り学習を経て、マーケットへの本格参入
この「レシピ」を片手に、欧州の企業CSRや金融機関が本格的にソーシャル・ファイナンス市場に参入していくことが期待されます。日本でも、こういうガイドブックが出来ると良いですね。報告書は以下のサイトから入手できます。