集合的インパクトを可能にする「共有評価指標(Shared Measurement)」

FSGが推進している「集合的インパクト(Collective Impact)」のコンセプトが国際的な拡がりを見せています。当初、FSGは強力な事務局の存在を前提としたコミュニティ規模の協働を想定していました。しかし、米国から海を越えた英国では、より緩やかなネットワーク志向の「集合的インパクト」の可能性が模索されています。

その一つ、Inspiring Impactが提唱しているのが、「共有評価指標」を軸とした「集合的インパクト」です。考え方はごくシンプルで、同じ領域で活動しているネットワーク、グループ、あるいはフランチャイズ組織や連合組織において、「共有評価指標」を設定し、これに基づいて、各団体が自分たちの活動を評価しようというものです。評価結果は、団体間で共有されるため、個別の団体の成果だけでなく、全体としてどのようなインパクトを達成したかも明らかにすることが出来ます。

Inspiring Impactは、このモデル事業として、JET事業という、英国における青少年の雇用支援プログラムに共有評価指標を導入しました。指標には、職業訓練、職業コーチング、職業紹介、心理カウンセリングなど、様々なものが用意されており、各団体は、それぞれ自分たちの活動にあった評価指標を採用し、活動を評価します。同時に、その評価結果をJETネットワークで共有することで、ネットワークの全体的なインパクトが分かるというシステムです。

最近、Inspiring Impactは、この共有評価指標の枠組みを使用しているネットワークやグループのケース・スタディを行い、この成果をレポートの形で公開しました。その結果、共有評価指標を使えば、以下のようなメリットが得られることが明らかになりました。

■データ共有によるメリット
・サービスや事業戦略の改善
・関係機関の政策に対する影響力行使
・事業委託機関の巻き込み
・他団体との比較やベンチマーク設定
・資金提供の支援

■アプローチ共有によるメリット
・スケールを通じた経済的メリット
・協働の促進
・インパクト実践の改善

こうしたメリットは、直感的にもその通りだと思いますし、またレポートに掲載されている事例でも裏付けられています。その意味で、とても説得力のあるレポートだと思います。

共有評価指標のユニークさは、ただ指標を設定するだけで、参加に強制性はなく、また参加団体の活動の独自性や自発性が保証されている点にあります。さらに、参加団体は、共有評価指標を通じてネットワーク全体のインパクトを明らかにすることが出来るため、このスケールメリットを通じて、行政などに対する影響力を増加させることも出来るし、また、他団体との情報共有を通じて、自分達の活動の改善を図ることも出来ます。まさに、ウィン・ウィンでインパクトを達成できるシステムだと言えるでしょう。

おそらく、この「共有評価指標」アプローチ、ネットワーク型集合インパクト時代の新しいスタンダードになるような予感がします。ご関心のある方、報告書は、以下のサイトで入手できます。

http://www.thinknpc.org/…/shared-measurement-greater-than…/…

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