SxSWとオバマ大統領の新イニシアチブ

日本でも結構メディアが取り上げるようになったSxSW。毎年、テキサス州オースティンで開催される音楽、映画、ハイテクの祭典です。最近は、日本からもハイテク業界関係者がブースを出すようになりました。でも、SxSWには、もう一つ、ソーシャルな顔もあります。SXGOODというトラックで、テクノロジーを中心に、映画や音楽なども活用したソーシャルな試みについて、プレゼンしたりディスカッションしたりしています。

そのSxSWに、今年、オバマ大統領が、現職の大統領として初めて参加しました。プレゼンのテーマは、テクノロジーを通じた市民参加の促進と、格差・貧困の克服。Change!を掲げて様々な革新に取り組んできたオバマ大統領らしい、ユニークなイニシアチブが動き出しそうです。

オバマ大統領のパネル討論については、SxSWのウェブサイト上に動画が投稿されているのでこちらを見ていただくことにして、とりあえず、ホワイトハウスが今回のプレゼンにあわせて発表した新たなイニシアチブ「オープン・データを活用した機会付与プロジェクト」の概要をご紹介しておきましょう。

プロジェクトの基本目標は、その名の通り、「すべてのアメリカ人の経済状況の改善機会提供のためのオープンデータ活用」です。具体的には、連邦政府や州政府が持っている様々なデータを、市民社会、非営利セクター、コミュニティ団体が容易に活用できるように加工して公開し、これによって、アメリカ貧困層の、求職、住居確保、学校の選択、コミュニティ開発などを支援しようというものです。

プロジェクトの柱は以下の通りです。

1)機会向上のための政府統計サイト立ち上げ
⇒政府が持つ統計資料にアクセス出来るサイトを立ち上げ。さらに、このデータを使ってアプリを開発する際の支援キットも提供し、市民のデータ活用を促進。

2)政府データをマッピング可能に
⇒上記のデータにマッピング・ツールを加えることで、コミュニティごとのデータ・マッピングを促進。これを通じて、マッピング・データに基づくコミュニティ団体やNPOの戦略策定を支援。

3)各連邦政府機関の協力
⇒連邦政府機関は、それぞれ、所管分野の市民団体、非営利組織、コミュニティ団体と協力してデータの活用をさらに推進

これに加えて、以上の政府の取り組みに呼応する形で、民間のアプリ開発会社やNPOが、情報提供、アプリ開発支援、データ整備などを進めることになっています。

今回のイニシアチブにより、データを活用した戦略策定、特にマッピングを通じたコミュニティレベルでの戦略策定と協働が加速されそうです。

たとえば、コミュニティレベルで、貧困家庭やシングルマザーがどの地域に集中しているのか、その地域の需要を賄うだけの低所得者向け住居や社会福祉施設が存在するのかが、簡単に分かるようになります。この情報は、財団・NPOがどの地域にどのような活動を展開しなければならないかを考える上で、強力なツールになるでしょう。まさに、政府がデータインフラを提供し、これを活用して民間非営利セクターが支援を展開できる体制が整備されることになります。

また、言うまでもなく、貧困層が、どこにどのような支援組織や支援プログラムがあるのかも、携帯やスマホを使ってリアルタイムで探し出すことが出来るようになります。貧困層のニーズに応じたアプリが開発されることで、情報アクセスが劇的に改善されることでしょう。

オープン・データ、マッピング、ITテクノロジーの3つを活用して、格差解消と機会均等に取り組もうという今回のイニシアチブ、ソーシャル・セクターにまさに革新をもたらしそうです。

https://www.whitehouse.gov/…/fact-sheet-white-house-launche…

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