社会的インパクト投資の標準的な成果指標の地位を確立しつつあるインパクト報告・投資スタンダード(IRIS: Impact Reporting & Investment Standards)がバージョン4.0にアップデートされました。これにより、社会的インパクト投資マーケットの発展がさらに加速しそうです。
今回のバージョン・アップは、2年ごとの定期的な見直し作業の一環として実施されました。改訂にあたり、IRISを運営しているグローバル・インパクト投資ネットワーク(GIIN: Global Impact Investing Network)は、主要な投資家や関係者へのヒアリングを行い、その意向を反映させています。こうしたマーケットを志向する丁寧な合意形成作業が、IRISの信頼性を高めていることは言うまでもありません。
今回の改訂のポイントは,以下の通りです。
1)新たに72のメトリックスを加えて、総数559のメトリックスを持つカタログになりました。これは、より広範な分野がインパクト評価の対象となることを意味します。
2)一方で、カタログ内の修正は5%以下にとどめることで、評価指標の一貫性確保に配慮しました。
3)メトリックスに「脚注」の要素を加えることで、プロジェクトや投資先が置かれた社会的状況をより詳しく説明できるようにしました。
社会的インパクト投資マーケットが、その対象分野を拡大し、マーケットの規模自体も発展する中で、以上のバージョンアップは、時宜を得た適切なものだと思います。
しかし、それ以上に重要なことは、IRISが他のパフォーマンス測定指標や報告システムとの連携を強化することを通じて、社会的インパクト市場の拡大に積極的に寄与しようとしている点です。以前にもお伝えしたとおり、IRISは、GIIRS, FAST,GOGLA, GRI, HIPSO, SPI4などの指標との連携を強化しています。これは、ESG投資やSRI投資分野の投資家の関心を社会的インパクト投資市場に惹きつけ、さらに国際開発金融やマイクロファイナンスの資金をより積極的に取り込めるようになることを意味します。これにより、社会的インパク投資市場への新たな投資家の参入が期待できます。
社会的インパクト投資の発展の鍵を握るIRISの動向、引き続き目が離せませんね。