英国チャリティ法の改正:規制強化と社会的投資促進がセットに

2016年3月、英国チャリティ法(正式な名称は、Charities (Protection and Social Investment) Act)が改正されました。チャリティ委員会の権限を拡大して規制を強化する一方、チャリティの社会的投資の促進に向けた法整備がなされています。以下、簡単に概要をお伝えしておきます。

チャリティ委員会の権限強化については、第一に、不法行為や不適切な経営、背信行為などがあると見なされたチャリティ団体に、公開で警告を発することが出来るようになりました。また、テロや資金洗浄、セクハラなどで訴えられた者は自動的に評議会メンバーの資格を喪失することになり、さらにチャリティ委員会はこの資格喪失を最長15年まで延長できるようになりました。使いようによっては、チャリティ委員会がより積極的にチャリティの経営に介入できるようになるため、チャリティセクターからは懸念の声も上がっています。

今回の権限強化の背景には、以前この情報ボックスでも紹介したファンドレイジング・スキャンダルがありました。ポピーの花を売って財産を得た老女の連絡先が本人の承諾なしにファンドレイザー間に共有された結果、集中的な寄付勧誘にあって結局、老女は自殺したという事件です。さらに、キッズ・カンパニーというチャリティ団体が、政府からの補助金を得た翌日に破綻したという事件も今回の法改正に大きな影響を与えました。保守・自由党連立政権になって規制強化の機運が高まっていた中、この2つのスキャンダルでチャリティに対する批判的な世論が高まったのを機に、今回の法改正に至ったようです。

同時に、社会的投資については、助成財団などが、ミッション関連投資を行いやすくなるように法改正がなされました。従来は、助成財団がミッション関連投資を行った際、投資により経済的リターンを得たり、逆に損失を被った際の責任が曖昧だったため、理事が投資決定に消極的でした。このため、助成財団のミッション関連投資がなかなか拡大しなかったのですが、今回の法改正で運用基準が明確化されたため、今後はミッション関連投資の拡大が期待されます。これは、社会的投資市場全体の発展にも寄与しそうです。

英国は、良くも悪くも、社会的投資や社会的企業の先進モデルを絶えず政策的に追求しています。チャリティ・セクターも、これに応じてダイナミックに変貌を遂げています。こうした状況での今回の法改正、日本の今後の非営利・公益法制を考える際にも参考になると思います。

http://www.theguardian.com/…/the-charities-act-what-you-nee…

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