英国政府が、2016年度社会的投資戦略報告書、及び英国を社会的投資のグローバルハブとする戦略報告を発表しました。英国政府は、2000年の社会的投資タスクフォース設立以来、2013年のG8社会的インパクト投資タスクフォース設立、そして2015年のグローバル社会的インパクト投資ステアリング・グループ設立と、21世紀の社会的投資マーケットの確立に主導的な役割を果たしてきました。その成果を踏まえた今回の2つの報告書、今後のグローバルな社会的投資マーケットを考える上で要注目の論点が満載で興味深いものとなっています。以下、CAF Pioneers Postの記事から概要をお伝えしておきます。
まず国内向けの戦略としては、「社会的投資を公共サービス転換のために活用」し、さらに「成果志向型業務委託に関する研究開発センターを英国主要大学の協力を得て設置していく」こととしています。資金的には、ビッグ・ソサエティ・キャピタルの資金活用を加速し、さらに官民連携ファンドの設立を促進。注目が集まる社会的インパクト債については、8000万ポンドの新たな基金を設置し、これに加えて案件形成を支援するために追加で2500万ポンドを用意するとのこと。
グローバル・ハブ戦略については、首相府、外務省、貿易投資省、ブリティッシュ・カウンシル、国際開発省が協力し、英国の社会的企業と社会的投資の魅力を海外にアピールするキャンペーンを展開。さらに、社会的投資の新興市場であるニュージーランド、フランス、バングラデシュ、カナダなどの諸国に対して、積極的に英国のノウハウを移植していくとしています。
同時に、記事は、市民社会側からの反応も伝えています。非営利シンクタンクのNPCは、今回の報告と2016年度の予算案の発表を受け、「バランスのある行動:チャリティと2016年度予算」という報告書を発表。その中で、社会的インパクト債に対する過剰な熱狂に警鐘を鳴らしています。具体的には、社会的インパクト債と引き替えによるチャリティ団体への補助金カットの危険性、ソーシャル・セクター側での経営ノウハウの欠如やニーズの不在などです。
私も、上記の報告書にざっと目を通しましたが、特に英国政府の報告はよく出来ていると思いました。労働党政権から保守・自由党連立政権に替わった直後の戦略報告は、既存の政策のつぎはぎの印象が強かったのですが、徐々に独自の政策を打ち出しつつあるように見えます。特に、公的資金・主流民間金融機関の資金を主軸としたサプライサイド型の政策を補完するため、クラウドファンディングを活用した草の根型の資金調達の重要性に着目している点は好感が持てました。その鍵を握るのがFinTechとP2P Lendingであることは言うまでもありません。この手法が、今後数年間の社会的投資市場の発展の原動力となりそうです。
記事の詳細については以下のサイトをご覧下さい。
https://www.pioneerspost.com/…/uk-government-unveils-2016-s…