SROI評価が地域コミュニティを変革する!

英国ダービー市議会が、2012年に開始した「地元地域コーディネーター事業」のSROI評価報告書を公開しました。この報告書、SROIの新たな魅力を示したものとして注目されます。

SROI(Social Return on Investment)評価手法は、財団の事業や企業の社会貢献活動などの評価手法として日本でも普及し始めています。もちろん、SROIはこういうプログラム評価でも威力を発揮するのですが、個人的にSROIが最も有効性を持つのは、地方自治体の地域プログラムに対する評価だと考えています。

理由は、SROIの真価が、「社会的価値の貨幣換算」にあるのではなく、マルチ・ステイクホルダー手法と、評価のマテリアリティ重視にあるため。地域プログラムが、本当に住民の役に立っているのかどうかを様々な利害関係者の視点を踏まえて定量的に示す上で、SROIの果たすことが出来る役割は極めて大きいと思います。

今回の報告書は、まさにこうしたSROIの真価が発揮されたものです。報告書によると、10箇所に配置された地元地域コーディネーターの活動を評価し、1ポンドあたり4ポンドの社会的価値が生み出されたと試算。配置を17箇所に拡大すると、さらに社会的価値は増大するだろうと予測しています。

もう少し内容を詳しく見てみましょう。地元地域コーディネーターというプログラムは、コーディネーターが地元に密着する形で社会的弱者にアドバイスを行うというものです。単発的なレベル1支援と、より長期的にコミットするレベル2支援があります。さらに、市議会に対してコミュニティの状況改善のための様々な報告やアドバイスも行います。

今回の報告のユニークな点は、レベル1、レベル2の支援で、住民の健康や経済状況が改善されたという効果を測定しただけでなく、コーディネーターの活動を通じて社会的弱者がエンパワーされて社会的包摂につながったこと、これによりコミュニティのつながりが強化され、たとえば消防・治安などの面でも改善が見られたこと、さらにこれを通じて市議会自身の認識も変化したことなど、間接的な波及効果にまで踏み込んで評価している点です。プログラムの副次的波及効果を可視化し、これを定量的に提示したことでコミュニティに大きな影響を与えました。

さらに、報告書は、評価結果に基づいて、レベル1、レベル2,市議会、消防・警察、及びコミュニティ全体のレベルのそれぞれで、プログラムのインパクトをさらに改善するための様々な提言を取りまとめています。ダービー市議会も提言に前向きとのこと。この点も、評価としては理想的だと思います。

地域の再活性化は、日本も含めて、先進諸国共通の課題です。万能の処方箋はありませんが、確実に言えることは地域に密着したプログラムを作り、これを地域レベルで丁寧に検証・評価した上で中長期的な視点から事業を改善していくことです。このためのツールとして、SROIが威力を発揮したのが今回のダービー市の評価だと思います。日本の自治体も、ぜひこうしたアプローチを積極的に導入してほしいですね。

http://www.thinklocalactpersonal.org.uk/…/Social_Value_of_L…

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