社会的インパクト投資というと、開発協力や環境保護、先進諸国の貧困コミュニティ開発や低所得者支援というイメージが先行しがちです。しかし、社会的インパクト投資はアート支援にも活用できるはずと言うコンセプトで、新たなプラットフォームが立ち上がりました。
プラットフォームの名前はUpstart Co-Lab。資金提供は、フォード財団、ロックフェラー財団、スルドナ財団、メロン財団。さらにヘロン財団などが運営に協力しています。
プラットフォームの目的は、(1)イノベーターとしてのアーチスト活動の推進、(2)活動に対する資金提供の拡大、(3)これを通じた、アーチストのクリエイティブ活動の持続可能性向上、です。これを実現するため、プラットフォームは様々な事例研究を行うと共に、インパクト投資家とアーチストを媒介する役割を果たします。
実際、彼らがこれから立ち上げようとしているプロジェクト、従来の寄付・助成中心のアート支援とは全く違う観点からのアプローチで刺激的なものになっています。
■ArtLoan
⇒ナショナル・アート・バンクを立ち上げて、現在活動中のアーチストから作品を購入し、これを政府や企業、コミュニティ機関にレンタル。資金は、コミュニティ開発金融機関や財団・CSRなどで調達。
■ArtistStop
⇒低所得アーチストを支援するため、各地のアートスペースやアクター基金と連携し、公的給付や補助金プログラムの情報を総合的に提供
■Creativity and Sustainability
⇒国連SDGsの様々なプロジェクトにアーチストが参加し、アートを通じたSDGsの目標達成を支援。同時に、これを通じてSDGsに流れ込むインパクト投資資金をアートにも活用
■アートスペース構築型コミュニティ証券の開発
⇒カルバート財団が展開するコミュニティ証券に、現在、全米各地で展開しているアートスペース構築事業の資金調達スキームを追加。
■Creative Economy Index Fund
⇒アーチスト参加で付加価値を生み出すクリエイティブ・エコノミー。この経済規模は、現在、米国GDPの4.2%にまで成長している。これを踏まえ、新たにクリエイティブ・エコノミー指標を証券取引に加え、クリエイティブ・エコノミーへの投資を促進
■ArtPath
⇒高学歴者が多いアーチストだが、彼らを「イノベーター」として養成するトレーニング・プログラムも、キャリアパスもない。これを解決するため、アーチストが、自らイノベーターとして自立して事業を展開できる養成プログラムを全米の大学で展開。
プラットフォームは、これ以外にも、ベスト・プラクティスの収集・公開や、全国キャンペーンの展開なども計画しているとのことです。
従来、アート支援と言えば、制作活動の支援であり、これを補完するフェローシップなどの生活支援でした。しかし、アーチストの社会的役割は、表現者から、イノベーター、ファシリテーター、起業家へと多様な拡がりを見せています。こうした新たな活動を促進するために社会的インパクト投資を活用しようというのがこのプラットフォームのコンセプト。これはアートサポートの新たな可能性を見せてくれそうです。