日本でもNPO法が施行されて20年になります。この間、NPOを巡る環境は大きく変わりましたし、担い手の世代交代も進み、活動も多様化しています。こうした中、新しい環境に対応してさらに発展していくNPOと、時代の変化に取り残されて衰退していくNPOが現れています。では、このような変化に適応するための「組織の耐久性」をどのように確保すれば良いのでしょうか。
カリフォルニアを拠点に環境・教育分野で活動するS.D. Bechtel Jr. Foundationがモニター・インスティチュートに委託して作成した「組織の耐久性ガイド」は、この問題を包括的に検証・改善するための道筋を分かりやすく提示していて参考になります。
この財団が、ガイドブックを作成したのには理由があります。実は、この財団、「サンセット方式」を採用した財団で、2020年までに財団資産をすべて使い切って活動を終了する予定です。そこで、財団活動が終了する2020年以降も、支援団体に活動を継続してもらいたいという思いから、このガイドブックを作成しました。そこまで支援団体のことを考える財団はなかなかないですよね。好感が持てます。
で、耐久性のポイントですが、ガイドは、以下の点を重視します。
■学びの文化
■スタッフの能力とリーダーシップ
■状況認識
■計画策定と実行能力
■組織の評判とコミュニケーション戦略
■パートナーシップと連合形成能力
■財政基盤
ガイドブックは、それぞれのポイントについて、「こういう問題を感じたら改善のためのキャパシティ・ビルディングを始めた方が良いのでは?」という形で、分かりやすく整理していきます。
たとえば、「スタッフが自分の仕事と組織のビジョンがどのように連動しているのか分からないと感じたら、学びの文化を育むための戦略ビジョンの策定を行う」とか、「リーダーが状況の変化に無自覚で新たな状況と組織との関わりを考えていない、と感じたら、フィールド・スキャンを行う」などです。それぞれについて、さらに作業を進めるための参考文献リストも充実しています。
日本でも、NPOのキャパシティ・ビルディングは重要な課題です。この問題に取り組む財団や企業もあります。こうしたプログラムを充実させる上で、今回のガイドブックは非常に有益な情報リソースを提供してくれていると思います。