ドイツのナショナル・アドバイザリー・ボードの事務局を務めるBertelsmann財団が、ドイツの社会的インパクト投資市場の現状調査レポートを発表しました。
さすがにドイツらしく、報告書は、ドイツ国内の資本によるドイツ国内の投資に限定し(海外向けのものは除外)、また調査の対象も、中小企業向け投資やグリーンビジネス向け投資などを除いて社会的企業向けの投資に限定しています。さらに、社会的企業の要件も、単に「社会的」な活動をしているというのではなく、一定程度の利益分配制限を課している企業と社会的ミッションを持った法人に限定しました。この結果、まさに社会的企業を育成するための社会的インパクト投資マーケットの概要が明らかになっています。
報告書によると、2015年末時点で社会的インパクト投資の資産残高は6900万ユーロ。これは、2012年時点と比較して3倍の伸びとなっています。また、年間投資額も2016年には7〜800万ユーロに達すると見込まれており、マーケットは順調に拡大していることが分かります。この成長を支えているのは、BonVentureとAmanda Venturesという2つのソーシャル・ベンチャー・キャピタル・ファンド。やはりこうした民間ファンドの活動が、マーケットの発展には不可欠のようです。
他方、資金の出し手は主に財団と社会的投資家で、金融機関の参加はまだ発展途上にあります。投資対象分野は、雇用、教育、保健医療、環境分野が中心。投資先は、80%が営利団体ですが、非営利団体にも20%が投資されています。投資手法は主にメザニン・キャピタルと無担保デット・キャピタル。エクイティはまだ一般的ではありません。また、メザニン・キャピタルとグラントを組み合わせる手法も開発中とのこと。リスク・コントロールの新たな手法として注目されます。
さらに報告書は、2012年のG8社会的インパクト投資報告の政策提言のドイツにおける実施状況のモニタリング結果も記載しています。ドイツ政府は、家族・老人・女性・若者省、経済・エネルギー省、経済協力開発省が社会的インパクト投資に関心を持っているとのこと。報告書は、さらに財務省と雇用・社会福祉省の関与を通じて全政府的な取り組みが進むことを求めています。このあたり、日本でも同じことが言えそうですね。
社会的インパクト投資に関する情報は、どうしても英米を中心とするアングロサクソン系諸国のものが中心になりがちです。しかし、日本の制度にはヨーロッパ大陸系の制度も入っていますから、今回のドイツの報告書は大変参考になると思います。ご関心のある方は以下のサイトをご覧下さい。
http://www.bertelsmann-stiftung.de/…/Market_Report_SII_in_G…