社会的インパクト投資マーケット発展には、個人投資家の巻き込みが不可欠です。機関投資家や主流金融機関は、大型財団のリスクコントロールなしにはなかなかこの市場に参入してこないという現実が明らかになるにつれ、ソーシャルなマインドを持った一般投資家が、社会的インパクト投資に資金を投じることの出来る枠組みの必要性が明らかになってきました。
英国ビッグ・ソサエティ・キャピタルが今年3月に発表した「世界の個人向け社会的投資商品」という報告書は、この課題に取り組む欧州の主要機関の試みを分析していて参考になります。
報告書は、一般投資家が社会的インパクト投資に参加するメカニズムを以下の5つの事例分析を通じてモデル化しています。
■コミュニティ投資
⇒デンマークでは、コミュニティ・レベルでの再生エネルギー・プロジェクトに、一般投資家が投資できる枠組みが発達。2001年時点で15万世帯が投資し、風力発電組合は1000以上になっている。
■クラウドファンディング
⇒イタリアでは、NPOに融資するTerza Valoreというクラウド・ファンディングが設立されている。基本的にはプロジェクト・ベースで、現在、1,274名の投資家が参加、総額597.4万ユーロを70のプロジェクトに融資した実績あり。
■環境ビジネスに対する税制優遇
⇒オランダは、グリーン・ファンドに対する税制優遇措置を設けて、一般投資家の投資を促進。プロジェクト・ベースで、25万の投資家が7400のプロジェクのグリーン・ボンドやグリーン・シェアを購入。一件あたりの投資サイズは3万ユーロ。
■個人向けのコミュニティ投資証券
⇒アメリカのカルバート財団は、個人が少額から購入できるコミュニティ投資証券の販売を通じて資金を調達し、コミュニティ開発や開発協力に投資。現在の投資家は4500、投資額は2.5億ドル。
■「連帯経済」運動を通じた個人向け社会的投資の制度化
⇒フランスの「連帯経済」運動により、一般勤労者がFinansolの認証を受けた貯蓄や投資を通じて、SRI、年金、保険などに資金を投じている。1人あたり平均4306ユーロで、総額65億ユーロの資金が集まっている。
社会的インパクト投資は、このような一般投資家の参加があって初めて幅広い裾野を持った市場に成長します。特に、フランスの連帯経済モデルは要注目ですが、クラウドやコミュニティ投資証券などの商品オプションも今後発展の可能性があります。
実は、日本でも、すでに自然エネルギー・ファンドや社会的企業向けのクラウドファンディングは存在しています。これをどのように広げていくのか、鍵を握るのは、おそらく地銀や信金・信組、あるいは生協の市民ファンドなどが、次のステップの商品開発にどこまで取り組めるかにあると思います。社会やコミュニティのための資金循環を活性化しようという試み、日本でも発展していってほしいですね。
http://www.bigsocietycapital.com/…/Social%20Investment%20In…