オープン・フィランソロピー・プロジェクトの挑戦

フィランソロピーの世界にも集合的インパクトを志向する動きが強まっています。例えば、米国財団センターの様々なオンライン・プラットフォームは、情報共有とマッピングを通じてフィランソロピー界の協働を促進しようとしています。しかし、情報提供だけではなかなか協働にまで結びつけることは出来ません。さらに一歩踏み込んだ仕掛けが必要です。

オープン・フィランソロピー・プロジェクトは、このような問題関心から立ち上がったユニークなプロジェクトです。その名の通り、「オープン・リソース」にこだわって協働を仕掛けようとしています。実施団体は、グッド・ベンチャーズという財団と、NPOの格付・レーティング情報プラットフォームのGiveWell。財団の資金とGiveWellの情報力でフィランソロピーの世界の革新を目指します。

オープン・フィランソロピー・プロジェクトの基本的な考え方は、(1)社会的に重要な課題であるにもかかわらず、多くの他のフィランソロピスト達がまだ十分に注意を払っていない領域を発掘し、(2)この領域について課題、アクター、支援状況、可能なソリューションについての事前調査を行い、(3)その結果を公開することで、他のフィランソロピスト達が、比較的容易に新たな領域を開拓することを支援する、というものです。同時に、グッド・ベンチャーズ財団自身もその領域に先駆的な支援を行います。

現時点で彼らが対象としている領域は、以下の通りです。

■米国国内政策
⇒司法改革、マクロ経済の安定化、移民政策、土地利用政策

■グローバル・コミュニティにおける壊滅的リスク
⇒バイオ・セキュリティと疫病への対応、人工知能がもたらす潜在的なリスク

さらに、今後、対象領域を科学研究やグローバル保健医療・開発に広げていく予定とのことです。

フィランソロピーの重要な役割の一つは、政府・ビジネス・市民社会に先駆けて、新たな社会ビジョンを提示することであり、また短期的な利害にとらわれない立場から中長期的なリスクを明らかにしこれに対する対策を呼びかけるというものです。これは、基本財産の運用収入を基礎とする助成財団だからこそ可能な機能です。

今回のオープン・フィランソロピー・プロジェクトは、この役割をさらに強化し、自己の財団だけでなく、他の財団にも広く参加を呼びかけることで集合的インパクトを実現しようという試みだと言えるでしょう。ドナー・アドバイズド・ファンドにも呼びかけて、大型助成財団だけでなく、個人フィランソロピストの参加も募っている点もユニークです。この野心的な試みが、今後、どんな展開を示すか要注目です。

http://www.openphilanthropy.org

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