エビデンス重視政策を機能させるための包摂的アプローチ

先進諸国の社会政策において、エビデンス重視政策が注目を集めています。英国では、What Works Centerが設立され、政府がエビデンス重視政策の推進を進めています。米国でも、今後、数年かけてエビデンス重視政策という観点から連邦政府の政策レビューを行う法案が成立しました。

確かに、エビデンス重視政策は重要です。しかし、ただ無作為化制御試験(RCT: Rondomized Controll Trials)のデータを使って政策の有効性を検証するだけでは、その潜在的な価値を活用し切れません。RCTは、農業や医学分野で発展しましたが、これを社会政策のような複雑な領域に機械的に適用することは出来ないからです。

ボストン・コンサルティング・グループが設立したBCG財団の政策ブリーフは、この問題を取り上げ、より包摂的なアプローチの必要性を訴えています。わずか2頁の提言ですが、よくまとまっていて説得力があります。ポイントは以下の通りです。

1.現在のエビデンス重視政策が抱える問題点は、(1)ある地域で有効だった政策が他の地域でも有効であるという誤った前提に立つこと、(2)評価専門家の検証結果には、実現可能性や現場から得られた知見を欠く場合があること、の2点。

2.(1)の問題を解決するためには、他地域の政策を適用する際、実地のパフォーマンス・データ・モニタリングをきちんと行い、適用可能性を検証することが必要

3.(2)の問題を解決するためには、評価専門家のみならず、政策担当者や実務家が参加した意思決定システムの構築が必要

4.エビデンス重視政策の実効性を高めるために、以下の原則を重視すること
・需要主導
・実用性
・理解可能性
・即時性
・費用対効果
・妥当性

実際、英国では、What Works Centerだけでなく、これを政策として現実化するために、実務家や政策担当者を交えた省庁横断的な試験諮問パネルが設置され、エビデンス重視政策の導入について検討しているとのことです。

エビデンス重視政策は、非常に有効な政策ツールとなることが期待されています。しかし、ごく少数の専門家と政府関係者が、エビデンスを楯に上意下達式に政策を適用してもこれは機能しません。エビデンス重視政策の実際の運用にあたって、より包摂的なアプローチが必要であるという政策ブリーフの主張は、今後の日本への導入の際にも配慮される必要があると思います。

http://www.centreforpublicimpact.org/…/briefing-bulletin-f…/

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