社会的企業は、政府の様々な福祉サービスの隙間を埋め、さらに多様な財・サービスを通じて社会的包摂を推進する重要な存在です。では、このような社会的企業セクターをより発展させていくためには何が必要でしょうか。
通常、社会的企業の発展政策では、人材育成、マネジメント支援、補助金・優遇ローンなどの資金提供が頭に浮かびます。しかし、社会的企業の財・サービス購入市場の拡大も同様に重要です。そのためには、行政の公共調達(業務委託を含む)を最大限に活用する必要があります。行政が、一方で社会的企業の育成を謳いつつ、他方で、公共調達から社会的企業を閉め出して営利企業だけを優遇していてはマッチポンプと言わざるを得ません。
最近、英国ではこの議論が盛り上がっています。きっかけは、労働年金省が今年の秋から始める労働保険プログラムです。プログラムの内容は、障害や健康状態のために失業中の人達を職場復帰させるというもので、労働年金省は、これを請け負う事業者選定にあたっては公平性を期すと約束していました。
しかし、ビッグ・ソサエティ・キャピタルがシンクタンクに委託して調査した結果、選定条件が厳しすぎて、実質的に社会的企業を閉め出す可能性が高いということが判明しました。事業規模や保証金の有無、価格競争優遇などの条項を入れれば、当然、大手の労働派遣会社が有利になり、結果的に社会的企業は落札できません。
問題の重要性を認識した英国のソーシャル・セクターは、連名で、英国政府に対し、公開書簡を発表し、是正を求めたとのことです。そこには、ビッグ・ソサエティ・キャピタルをはじめとして、チャリティ・バンク、ソーシャル・ファイナンス、ソーシャル・エンタープライズUKなど、社会的投資や社会的企業を牽引してきた主要団体が名を連ねています。
今回の運動、議論の内容もさることながら、公開書簡に名を連ねた団体の勇気にも敬意を表したいと思います。ビッグ・ソサエティ・キャピタルは休眠預金活用の一環として設立された団体ですし、ソーシャル・ファイナンスは、SIB案件組成で英国政府と緊密に協力しています。その意味で、政府と緊密な関係にあります。しかし、今回のように、物申す時はきちんと声を上げる。ここに英国市民社会の健全な独立性を感じました。うらやましいですね。
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