NPOを巡る誤解の一つに、アドボカシーがあります。NPOは特定の政党や候補者を支援する「政治活動」を行うことは規制されていますが、自分たちが追求するミッションを達成するため、政策提言や特定の政策の実現を目指す「アドボカシー活動」は認められています。しかし、このことは十分に共有されておらず、行政が不当に規制したり、逆にNPO側が自己規制してしまうことが多々あります。
全米NPO協議会(National Council of Nonprofits)は、こうしたNPOのアドボカシー活動を支援すると共に、NPO全体に関わる政策についてのアドボカシー活動を全米レベルで推進する組織です。毎年、NPOに関する公共政策課題を公表して、全米のNPOに、NPOの地位向上や環境改善に向けたアドボカシー活動への参加を呼びかけています。
最近、公表された「公共政策課題2016」では、以下の柱の下に様々な政策提言や論点が記載されています。
1.税制:NPOを通じたコミュニティ課題解決の強化
2.予算・財政支出:コミュニティ・ニーズへの対応
3.経済:雇用創出と経済開発を通じたコミュニティの強化
4.公益のための官民協力促進
5.アドボカシーの権利:市民参加の促進
6.一般への説明責任とNPOの独立性確保:一般からの信頼確保
「公共政策課題2016」では、それぞれの柱の下、NPO予算削減反対、フルコスト・リカバリー遵守、NPO税制強化反対、NPO向け公共調達契約改善、NPOの政策提言活動への規制強化反対など、様々な課題が列挙され、NPOがこうした課題に自治体、州政府、連邦政府のそれぞれのレベルでアドボカシー活動に参加するよう呼びかけています。
米国では、全米NPO協議会のような全国組織が、常時、連邦政府から自治体レベルまでの政府の動向を監視し、問題があればすぐに声を上げることで自分たちの権利を確保するよう努めています。さらに毎年、こうした政策課題を発表することで、NPOセクター全体の地位向上を目指しています。
上記に挙げられた諸課題、日本のNPOセクターにとっても関心の深い分野ばかりです。全米NPO協議会の活動は、日本のNPOセクターにとっても、様々な示唆を与えてくれると思います。