社会的企業向けファイナンス発展に向けて

EUは社会的企業を社会的課題解決のための重要なプレイヤーと位置づけ、積極的に支援策を進めています。このために、様々な研究プロジェクトも支援しています。今回は、最近デンマーク工科大学政策・ビジネス分析センターが発表したディスカッション・ペーパー「社会的企業向けファイナンス発展にむけて」をご紹介したいと思います。

社会的企業は、その発展段階や法人形態、事業目的や戦略に応じて多様な資金ニーズを持っています。営利法人と非営利法人では、当然必要とする資金は異なります。

ペーパーは、まず社会的企業が現在利用できるファイナンス手法にどのようなものがあるのかを分析します。グラント、デット、エクイティ、メザニン、ハイブリッドと多様なファイナンス手法が既に開発されています。

その上で、ペーパーは、政府の役割として、(1)政府系ファンドの設立、(2)社会的証券取引市場の開設、(3)社会的インパクト債の組成、(4)マッチング・ファンド、(5)社会的投資か向け税制優遇、の5つが必要だとしています。

最後に、今後発展するだろうファイナンスモデルとして、(1)中間支援団体を通じたマッチング・ファンド、(2)社会的投資仲介ファンドを通じた投資、(3)社会的インパクト債、の3つを取り上げてそれぞれの可能性を分析しています。

ペーパーの議論に目新しい点はありませんが、今までの多様な試みを整理してくれていて役に立ちます。日本の場合、ここに掲載されている手法の多くはまだほとんど知られていないので、この領域に関心を持つ方が、今後、ファイナンス手法を開発していく際にも利用できるでしょう。お勧めのペーパーです。

それにしても、EUがこうした領域に資金を提供するのはうらやましい限りです。日本政府も、ぜひソーシャル・ファイナンスの分野における大学・研究機関の研究プロジェクトに資金を出してほしいと思います。

https://webgate.ec.europa.eu/…/promoting-social-enterprise-…

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